2010-01-01から1年間の記事一覧

『アリス・イン・ワンダーランド』(ティム・バートン/2010)

地元シネコンレイトにて待望のティム・バートン最新作。実は2日連続で通ってしまった。ルイス・キャロルとティム・バートンのマリアージュだなんて、多くの人と同じくツボすぎてもはやツボではなくなってしまうくらい個人的にド真ん中な格好なのだけど、正…

『死に至る愛』(アラン・レネ/1984)

日仏学院「アラン・レネ全作上映」最終日にてアルノー・デプレシャンがフェイバリットに挙げている『死に至る愛』。この苛烈な傑作について語る前にまずもって驚いてしまったのは、右図参照のポスターのデザイン。『死に至る愛』を体験してしまった者は、こ…

『スモーキング』(アラン・レネ/1993)

こちらは90年代アラン・レネ。本来なら『ノー・スモーキング』と併せて体験するべきだけど事情によりタイムアップで無念の帰路に。ただこの作品の絵の中の絵本のようなフレーム展開の素晴らしさは『六つの心』や『風にそよぐ草』へ確実に受け継がれている…

『ジュテーム、ジュテーム』(アラン・レネ/1968)

日仏学院「アラン・レネ全作上映」にてデプレシャン推薦の『死に至る愛』と共に最も楽しみにしていた『ジュテーム、ジュテーム』。アラン・レネの濃密な60年代は本作をもって一旦閉じることになる。以後『薔薇のスタビスキー』(1974)までの沈黙の理…

『Corps à Coeur』(ポール・ヴェキアリ/1979)

輸入DVDでポール・ヴェキアリ『Corps à Coeur』。英題を『Drugstore Romance』。ポール・ヴェキアリといえば日本公開された『薔薇のようなローザ』を蓮實重彦氏の著作で知ったのが最初の出会い。日本では過去に代表作『女たち、女たち』や『ワンスモア』…

『六つの心』(アラン・レネ/2006)

日仏学院「アラン・レネ全作上映」で『彫刻もまた死す』をはじめ短編5本と待望の『六つの心』。あの人を喰った快作『風にそよぐ草』に至った道程を理解するために『六つの心』を既に体験済みの方にも再度体験してほしい。個人的にも2010年をアラン・レ…

『ハデウェイヒ』(ブリュノ・デュモン/2009)

ブリュノ・デュモン初体験。カイエ紙の2009年度ベストにも入ってた『ハデウェイヒ』は物語構造の上での「揺らぎ」と少女の顔を捉えるカメラの「揺らぎ」が絶妙な形で実現している。信仰心の厚さが、キリスト自身からの肉体的・精神的な愛を求めてしまう…

『あの夏の子供たち』(ミア・ハンセン=ラブ/2009)

オリヴィエ・アサイヤスの『8月の終わり、9月の始め』の肖像としての少女や、あの素晴らしい『感傷的な運命』における息を呑む美しさによって個人的には神秘化している感すらある女優ミア・ハンセン=ラブの監督第2作。ユセフ・シャヒーンやエリア・スレ…

『風にそよぐ草』(アラン・レネ/2009)

フランス映画祭2010関連特集「アラン全作上映」の内、09年のカイエ・デュ・シネマ年間ベストやフィルムコメント紙の選ぶ未公開外国映画部門で1位に輝いた最新作。上映後のアルノー・デプレシャンのトークによると、ティエリー・ジュスは、この作品が…

『リグレット』(セドリック・カーン/2009)

「フランス映画祭2010」にてセドリック・カーンの新作。セドリック・カーンの描く”宿命の女”には、身体的にも内面的にも決して軽やかさを纏うことのない、どっしりとした重さを感じる。『倦怠』(1998)におけるソフィー・ギルマンのあのポッチャリ…

『恋の秋』(エリック・ロメール/1998)

エリック・ロメール追悼特集上映「アデュー ロメール」にて『恋の秋』。「自分の好きな男と女を結びつける?子供の遊びだ!」。『恋の秋』におけるゲームの規則は常に女性がつくる。イザベルが言うように「慎ましさが大事」。にも関わらず「慎ましさ」という…

『バッド・ルーテナント』(ヴェルナー・ヘルツォーク/2009)

恵比寿ガーデンシネマにてヘルツォークの新作。アベル・フェラーラ『バッド・ルーテナント/刑事とドラッグとキリスト』(1992)のリメイクだということは一旦忘れてしまってよいのかもしれない。ヘルツォーク版『バッド・ルーテナント』は記憶に新しい…

『映画「ピクニック」の撮影から』(アラン・フレシェール/1994)

上映前に本編『ピクニック』(ジャン・ルノワール)の上映あり。『ピクニック』本編におけるシルヴィア・バタイユの涙に打たれながら、なんてことない展開なのに何故にこんなに素晴らしいのだろうか!と改めて感銘を受けながら、こちらは撮影風景&アウトテ…

『Inland』(タリク・テギア/2009)

日仏学院「アラン・フレシェールとル・フレノワ国立現代アート・スタジオの軌跡」にてヴェネチア国際映画祭で国際批評家連盟賞を受賞の『Inland』。アルジェリア出身の監督というと最近では『最後の抵抗(マキ)』のラバ・アメール=ザイメッシュが記憶に新…

『ジャン=リュック・ゴダールとの対話の断片』(アラン・フレシェール/2007)

日仏学院「アラン・フレシェールとル・フレノワ国立現代アート・スタジオの軌跡」にてジャン=リュック・ゴダールとの対話断片集。ポンピドゥー・センター行なわれた『ユートピアでの単数/複数の旅行』へ向けた作品制作(『Vrai faux passeport(偽造旅券)…

『アンチクライスト』(ラース・フォン・トリアー/2009)

輸入DVDでラース・フォン・トリアーの新作。昨年のカンヌで大ブーイング&ドン引きだったらしい本作。『アンチクライスト』は過去作品にも見られるようなトリアーのイニシエーションに対するオブセッションがより前景化している。『アンチクライスト』に…

『トルチュ島に漂流した人たち』(ジャック・ロジエ/1976)

輸入DVDでジャック・ロジエ。大盛況の内に幕を閉じたジャック・ロジエ特集。こちらはフィルモグラフィー上『オルエットの方へ』と『メーヌ・オセアン』という二大傑作(というよりロジエは傑作しか撮っていないのだろう)の間に位置する作品。神秘的なア…

『メーヌ・オセアン』(ジャック・ロジエ/1986)

ユーロスペース「ジャック・ロジエのヴァカンス」にて『メーヌ・オセアン』。フランスの国鉄へ猛ダッシュ駆け込み乗車をする異邦人デジャニラ=ブラジル人の”ロスト・イン・トランスレーション”が次々と人を引き寄せる。裁判所で漁師プチガの弁護をするリデ…

『Coup pour coup』(マラン・カルミッツ/1972)

輸入DVDでマラン・カルミッツ『Coup pour coup(反撃)』。『Camarades』のラストにおける空へ向けて力強く突き上げられた拳の物語、その続きが展開される。女性の労働を描くということで背景にウーマン・リブ運動が絡んでくるわけだけど、素人を使ったド…

『抱擁のかけら』(ペドロ・アルモドバル/2009)

先週土曜初日に駆けつけたペドロ・アルモドバルの新作。地元シネコンレイトにて。個人的にアルモドバルの近作にはモノ足りなさを感じていたものの、本作のオードリー・ヘップバーンのような髪型をしたペネロペのスチールに期待が膨らんでいた。結果から言え…

『インビクタス』(クリント・イーストウッド/2009)

地元シネコンレイトにてイーストウッド新作。元来早撮りとして知られるイーストウッドの近年の画作りが簡単に撮られている(ように見える)ことはよく指摘されることだけど、『インビクタス』の撮影はその極みだと断言したくなるほどウソみたいな軽さに貫か…

ペペ・トルメント・アスカラール@恵比寿リキッドルーム

ハイヒールで足の甲を派手に踏まれる痛み(経験あり。あの強烈な痛みは忘れられない。貫通したかと思った)を覚悟しつつ、踊る気満々で出掛けたのだけど既にフロアはギュウギュウ。踊るスペースがない。仕方ないので海草系の如くゆらめきダンスに終始するも…

『オルエットの方へ』(ジャック・ロジエ/1971)

ユーロスペース「ジャック・ロジエのヴァカンス」にて『オルエットの方へ』。女の子3人組の無邪気な笑い&ショートコントが全編を支配する。この笑いはボケをかましておいて思わず自らのツボに入ってしまった人の笑いとよく似ている。そんな笑いが一瞬たり…

『Camarades』(マラン・カルミッツ/1970)

輸入DVDでマラン・カルミッツ長編第2作『Camarades』。先の長短編が「夜を彷徨い歩く夢遊病者の映画」だったのに対し、68年5月革命以降に『同志』と名付けられた本作は、かつて夢遊病者を囲っていたモラトリアム的な障壁が実際の運動へ向けて決壊する…

『Sept jours ailleurs』(マラン・カルミッツ/1969)

こちらは長編処女作。主人公ジャック・イジュランの7日間の愛人役にカルミッツの奥さんカトリーヌ・カルミッツ、ジャックの妻役にミシェール・モレッティ。ミシェール・モレッティはジャック・リヴェットの『狂気の愛』や『アウトワン』、マルクOの『アイ…

『Nuit noire, Calcutta』(マラン・カルミッツ/1964)

輸入DVDでMK2創業者マラン・カルミッツの監督作品。こちらの短編は脚本マルグリット・デュラス、主演モーリス・ガレルという並びから、当時の野心に溢れた闘争・連帯を背景に感じさせる処女作。DVD−BOXにはモーリス・ガレルがナレーションを務め…

『(500)日のサマー』(マーク・ウェブ/2009)

既にいろんな方が思い入れたっぷりに書いているので(どれも面白かったです)今回は記事にするのいいかな?(Twitterでちょっと呟いちゃったし)と思っていたのだけど、別の視点で書けることも少しばかりあるかな?と思い直したので書いておきます。所謂「デ…

ERIC ROHMER

今朝、静かに目を閉じてロメールのフィルムを再生すると、外ではシトシトと雨が降っていて、『クレールの膝』の雨宿りばかりが繰り返し浮かんでいた。黙祷。結局誰も真似することの敵わなかったロメールの作品を、真の意味で私たちが「発見」するのは、まだ…

『The Corridor』(シャルナス・バルタス/1994)

相対性理論&渋谷慶一郎『アワーミュージック』で快く幕を開けた2010年。一発目は輸入DVDでリトアニアの映画作家シャルナス・バルタスの『The Corridor』。シャルナス・バルタスの映画を見るのは恐るべき処女中篇『Praejusios Dienos Atminimui』、長…

2009年ベストシネマ

新年明けましてオメデトウゴザイマス。さてさて2009年ベストシネマ。2009年は傑作揃いだった2008年と比べてやや落ちるみたいなことは全然なく、こうしてリストを並べてみるとむしろ去年より凄かったんじゃないかと思える。やはりアメリカ映画の…