ERIC ROHMER


今朝、静かに目を閉じてロメールのフィルムを再生すると、外ではシトシトと雨が降っていて、『クレールの膝』の雨宿りばかりが繰り返し浮かんでいた。黙祷。結局誰も真似することの敵わなかったロメールの作品を、真の意味で私たちが「発見」するのは、まだまだこれから先の話なのかもしれない。遺作となった『アストレとセラドン』。呑気なほど強烈に射す光の中、妖しく淫靡なラストダンス。ロメールの”マイベスト”は作品を体験する度に個々人の中で激しく入れ替わっていくような気がする。批評が追いついていないというか、その奥義・秘密は未だ全く解明されていない。『アウトワン』のレオーのようにロメール本人に教えを請うことは生前ですら不可能だった。とりわけ好きなフィルムを一本。『コレクションする女』に強い思い入れがある。いまは感謝の気持ちでいっぱいです。


心よりご冥福をお祈り申しあげます。

ユリイカ2002年11月号 特集=エリック・ロメール

ユリイカ2002年11月号 特集=エリック・ロメール