2022年ベストシネマ

Annette

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2022年はCINEMOREさんで32本、otocotoさんで4本、リアルサウンドさんで2本、『レオス・カラックス 映画を彷徨うひと』、キネマ旬報さん、かみのたねさん、劇場用パンフレット、オピニオンコメント等に寄稿させていただきました。今年好きだった映画については、ほとんど書けたんじゃないだろうか?という一年でした。これはとても幸せなことです。充実感と同時に、もっとできたんじゃないかな感もあります。リツートやふぁぼ、本当にありがとうございます。普段なかなか言えないので、この場を借りて感謝を伝えたいです。いつも心から助けられております。

 

恒例のベスト10。1位はもう自分にとってはこれしかないという作品です。2022年のというよりも、21世紀の私的ベスト1です。その気持ちは昨年内覧試写で見たときから変わりません。5日連続で同じ作品を見るために劇場に駆け付けたのも人生で初めてのことでした。立川シネマシティ極音上映最終日で起こった思いがけない拍手。嗚咽のように涙したのが忘れられません。そして来日したレオス・カラックスと話せたこと。なによりこの本に『ポーラX』について書きましたと伝えられたこと。それはもうなんと言ったらいいか分からない。言葉にしようのない特別な体験です。

 

1位~5位までがとにかく固いです。好きな映画に出会えた一年だったと言えます。自分の書いた記事と併せて紹介します。劇場公開作だけにしようと思いましたが、一本だけ公開前の作品をフライングで入れておきます。レア・セドゥとクリステン・スチュワート。この作品を入れないわけにはいかなかった。

 

1.『アネット』(レオス・カラックス

Annette

cinemore.jp

2.『リコリス・ピザ』(ポール・トーマス・アンダーソン

Licorice Pizza

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3.『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』(ウェス・アンダーソン

The French Dispatch

otocoto.jp

4.『Crime of the Future』(デヴィッド・クローネンバーグ

Crimes of The Future

5.『ケイコ 目を澄ませて』(三宅唱

Small, Slow But Steady

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6.『彼女のいない部屋』(マチュー・アマルリック

Serre moi fort

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7.『あなたの顔の前に』(ホン・サンス

In Front of Your Face

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8.『秘密の森の、その向こう』(セリーヌ・シアマ)

Petite Maman

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9.『猫たちのアパートメント』(チョン・ジェウン

猫たちのアパートメント

10.『MEMORIA/メモリア』(アピチャッポン・ウィーラセタクン

MEMORIA

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11.『あのこと』(オードレイ・ディヴァン)

L'événement

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12.『グリーン・ナイト』(デヴィッド・ロウリー)

Green Knight

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10本に絞れず12本。以下に漏れた作品。いずれも大好きな作品です。他、ダヴィ・シュー『ソウルに帰る』のすべての瞬間が忘れられません。『やまぶき』(山﨑樹一郎)の馬や斜面。『裸足で鳴らしてみせろ』(工藤梨穂)における二人の肌が触れる瞬間が忘れられません。そして墓を掘ったらとんでもない生き物=ゾンビがうじゃうじゃ甦りました感満載な『マッドゴッド』(フィル・ティペット)の志の高さ。至高の『トップガン マーヴェリック』(ジョセフ・コシンスキー)。

 

ベストヒロイン賞は『ケイコ 目を澄ませて』の岸井ゆきの、『彼女のいない部屋』のヴィッキー・クリープス。もう一人のベストヒロイン賞は『そばかす』の前田敦子、『アネット』のデヴィン・マクダウェルです。カラックスの言うように『アネット』の運命は彼女が握っていた。

 

『みんなのヴァカンス』(ギヨーム・ブラック)

L'événement

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『スペンサー ダイアナの決意』(パブロ・ラライン

Spencer

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『麻希のいる世界』(塩田明彦

The World with Maki

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『ドント・ウォーリー・ダーリン』(オリヴィア・ワイルド

Don't Worry Darling

otocoto.jp

『そばかす』(玉田真也)

そばかす

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真に恐るべき傑作イエジー・スコリモフスキの『EO』は来年に回します。アルベルト・セラの『パシフィクション』は見逃しました(痛恨)。

 

次に旧作ベストリスト。今年はリバイバル上映という名の「読み直し」が活況でした。昨年のベストリスト記事にも書きましたが、この動きは個人的な気分とも合致しています。歪になっている評価の体系軸をいろいろ読み直さなければならない。いつの間にか出来上がっている価値観や体系軸を疑うことから出発したい。外部の評価軸だけではなく、自分の評価軸の見直しも含みます。何も終わっていないどころか、始まってさえいないのです。その意味ですべての旧作は新作だと思っています。

maplecat-eve.hatenablog.com

 

以下、劇場公開作品を初見、再見関係なくリストにします。順位というよりリストです。マーメイドフィルムさんやクレプスキュールさん、ザジフィルムさんをはじめとする配給会社の「旧作を新作のように読み直す」試みに、心からのリスペクトを贈ります。

 

1.『ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地』(シャンタル・アケルマン/1975)

JEANNE DIELMAN 23 QUAI DU COMMERCE 1080 BRUXELLES

maplecat-eve.hatenablog.com

2.『WANDA/ワンダ』(バーバラ・ローデン/1970)

WANDA

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3.『デュエル』(ジャック・リヴェット/1976)

Duelle

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4.『ディーバ』(ジャン=ジャック・ベネックス/1981)

DIVA

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5.『冬の旅』(アニエス・ヴァルダ/1985)

Sans toit ni loi

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6.『ノロワ』(ジャック・リヴェット/1976)

Noroît

7.『ロックンロール・ハイスクール』(アラン・アーカッシュ/1979)

ROCK'N ROLL HIGH SCHOOL

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8.『アトランティックス』(マティ・ディオプ/2019)

Atlantics

9.『地獄』(セルジュ・ブロンベルグ&ルクサンドラ・メドレア/2009)

Henri-Georges Clouzot's Inferno

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10.『ノベンバー』(ライナル・サルネット/2017)

November

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11.『たぶん悪魔が』(ロベール・ブレッソン/1977)

LE DIABLE PROBABLEMENT

12.『囚われの女』(シャンタル・アケルマン/2000)

LA CAPTIVE

13.『伴奏者』(クロード・ミレール/1992)

L' ACCOMPAGNATRICE

14.『子猫をお願い』(チョン・ジェウン/2001)

Take Care of My Cat

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15.『ゲット・クレイジー』(アラン・アーカッシュ/1983)

Get Crazy

 

パゾリーニの『テオレマ』『王女メディア』、フランソワ・トリュフォー映画祭の『私のように美しい娘』、ピエール・エテックスの全作品、ロバート・ダウニー・シニアの『パトニー・スウォープ』、パンフレットに寄稿させていただいたジャン=マルク・ヴァレ『C.R.A.Z.Y.』他、すべて挙げたらキリがなくなります、、。

 

劇場公開と関係ない旧作ベストも記録として残しておきます。初見の作品が多い。原稿のリサーチで見た作品です。あまり記事に反映されてないのですが。チョン・ジェウンとデル・トロの作品は共に学生時代の映画。才能が爆発しています。デル・トロは特に『クロノス』が好きです。パウロ・ブランコのプロデュース作品と言っても通じてしまいそうな趣きがあります。

Tale of Cinema

George Qui?

1.『映画館の恋』(ホン・サンス/2005)

2.『渇き』(グル・ダッド/1957)

3.『ガールズ・ナイト・アウト』(チョン・ジェウン/1999)

4.『ブンミおじさんへの手紙』(アピチャッポン・ウィーラセタクン/2009)

5.『George Qui?』(ミシェル・ロジエ/1973)

6.『ウォー・レクイエム』(デレク・ジャーマン/1989)

7.『アヴァ』(レア・ミシウス/2017)

8.『ブリュッセル、60年代後半の少女のポートレート』(シャンタル・アケルマン/1994)

9.『不変の海』(D・W・グリフィス/1910)

10.『Dona Lupe』(ギレルモ・デル・トロ/1985)

 

2022年、もっとも原稿を書く喜びを感じたのは『ナイトメア・アリー』の記事でした。書くことの会心というか、快楽があった。そしてもっとも書いてよかったと思ったのは『ロンリー・ブラッド』でした。たぶん一番反応が薄かった記事なのですが、とても強い思い入れがあります。

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ゴダール、ストローブ、吉田喜重、そして青山真治。大切な映画作家たちとのお別れがあった一年でした。ゴダール、ストローブ、吉田喜重は、悲しいけど時間と共に受け入れます。その巨大な損失と共に。

 

青山さんの映画をまだ見ることができずにいます。とてもじゃないけど受け入れられない。心の準備がまったく整っておりません。『アネット』の内覧試写でお見掛けしたのが最後になってしまいました。青山真治の映画を自分が振り返るのは、まだまだ先になるのだと思います。ありがとう以外に、まだなにも言葉が見つからずにいます。



『秘密の森の、その向こう』

Petite Maman

CINEMOREさんにセリーヌ・シアマの新作『秘密の森の、その向こう』評「標本瓶に詰められた秋、さよならを忘れないために」を寄稿させていただきました。小さな呪文を唱え合うような作品。セリーヌ・シアマの最高傑作だと思っています。

cinemore.jp

以下、セリーヌ・シアマと撮影監督クレア・マトンの言葉を。

 

「子供の頃を思い出すと秋を思い出します。秋は故郷のように感じられます」

 

「通常の家族の対立とは異なる物語を提供しています。突然、母と娘が同い年になることで家族の間に平等さがもたらされます。世代間のシスターフッドを表現したかったのです」

 

「同じ日に生まれた姉妹を配役したのも、この2人が同等であるという考えを広めるためです」

 

「アドリブは全くありませんでした。パンケーキのシーンは別です」

Petite Maman

セリーヌは感覚について、秋の色について、子供の頃の森について、たくさん話してくれました」(クレア・マトン)

 

「まるで楽譜を書くようにシークエンスごとに正確な指揮をとりながら、光と向き合いました。すべての瞬間がユニークで特別でなければなりません。物語が激しく、そして幻想的になる度に自然光の本当の豊かさを再現するように努めました」(クレア・マトン)

Petite Maman

「私は常に『燃ゆる女の肖像』の政治性を拡大しようとしています」

 

「子供たちの服は2020年のものを用意していますが、同時に1950年代にもあったかもしれないものを用意しています。たとえばマリオンの靴は、1955年当時も今も手に入るものです。撮影監督のクレア・マトンは基本的にすべてそうしなければならないと言っていました。つまり、すべてのディテールにこだわるということです。この家は50年前のヨーロッパのインテリアデザインを体現しているはずです。食器棚を開けると、現代の食器と50年前の食器が入っています」

 

「私はいつも映画の中の感情について話していました。たとえばネリーが母親を確認するためにスパイのように部屋に入るとき、彼女に対して”あなたは怖がっている”とは説明せず、”これはスパイ映画です”と言うことにしています」

Petite Maman

「『僕の名前はズッキーニ』のようにメランコリックでタフで感情移入できるような映画に関わったことは、脚本家としての私を完全に変えてくれました」

 

「フランス映画草創期のアリス・ギイ=ブラシェと、映画に関する画期的な思想家であり、夢としての映画を探求した『微笑むブーデ夫人』と『貝殻と僧侶』の監督であるジェルメーヌ・デュラックについて考えています。デュラックはマジックリアリズムを実践していたので、私の心に最も近い存在といえます。彼女は映画の哲学者であり、言語としての映画、文法としての映画の活動家でした。デュラックは映画は文学ではなく音楽だと言っていたのです。私は彼女のことをよく考えていました」

 

などなど。

 

『秘密の森の、その向こう』は絶賛公開中!

gaga.ne.jp