2011-01-01から1年間の記事一覧

2011年ベスト 〜音楽編〜

2011年は音楽を聴くのが楽しくて楽しくて仕方ない一年だった。何枚かのアルバムを挙げて、こんな一年でした。という芸当はできず、最終的に30枚になってしまったよ。個人的には、斜陽の末期状態ともいえる音楽業界の経済云々とは裏腹に、今、ポップミ…

『惑星のかけら』(吉田良子/2011)

2008年の桃まつりで上映された前作『功夫哀歌/カンフーエレジー』は、上映後の塩田明彦監督の爆笑トークと共に個人的にはとても忘れがたい作品で、上映中は勝手に笑いのツボに入ってしまい、特に謎の白装束軍団がスローモーションで登場するショットに…

第2回「ペドロ・コスタ特別講義」@造形大学

現在来日中のペドロ・コスタの特別授業ということで、昨年行われた第1回講義の感動を反芻しながら、いざ造形大へ。前回と違うのは一年前には知らなかった方を含む4人で造形大に向かえたこと。ささいなことだけど、いつの間にか自分を取り巻く関係性という…

『マイ・リトル・プリンセス』(エヴァ・イオネスコ/2011)

イザベル・ユペールとドニ・ラヴァンが共演する女優エヴァ・イオネスコの自伝的な新作は、「夢より長い夢を想像せよ」と説いた偉大な母イリナ・イオネスコとの興味深い創作(写真)の共犯関係の秘密を明かす舞台裏話のみならず、永遠の鏡の国(それは悪夢だ…

『ドニ・ラヴァンの肖像 魔術的な身体』(2009)

日本には伝わってこないドニ・ラヴァンの活動に関するドキュメンタリーが制作されていた、ということで早速見てみたところ、これがとても面白かった。このドキュメンタリーはレオス・カラックスとのアレックス3部作をドニ・ラヴァンが語るシーンからスター…

レオス・カラックスとクレール・ドゥニ

つい先日までリスボン&エストリル映画祭では「レオス・カラックス・レトロスペクティブ」が開かれていた。このプログラムにはカラックスが『ボーイ・ミーツ・ガール』以前、20歳のときに撮った短編『絞殺のブルース』に始まり、『ポーラX』のTV放映バ…

『アルバート・ノッブス』(ロドリゴ・ガルシア/2011)

東京国際映画祭6日目。『アルバート・ノッブス』は正直ミア・ワシコウスカで個人的な今年のTIFFを締めることのみが目的だったのだけど、これが当たりだった。年末に公開が決まっている『永遠の僕たち』(ガス・ヴァン・サント)を今回の上映では見送っ…

『アナザー・ハッピーデイ』(サム・レヴィンソン/2011)

東京国際映画祭5日目。去年の『ウィンターズ・ボーン』(祝・今週末公開!)のような拾い物になるのではないか、という事前の予想に見事に応えてくれたのが、このサム・レヴィンソンによる処女作『アナザー・ハッピーデイ』だ。結婚式に集まる親戚一同の図…

『ある娼館の記憶』(ベルトラン・ボネロ/2011)

東京国際映画祭3日目。題材的には個人的な好みド真ん中なベルトラン・ボネロの新作は、監督本人の言う「溝口健二へのオマージュ」、という文脈で仮に(←ここ強調)語るとするならば、溝口は凄かった(ミゾグチが足んねーよ)、で個人的には終わってしまう。…

『メカス×ゲリン 往復書簡』(ジョナス・メカス、ホセ・ルイス・ゲリン/2011)

東京国際映画祭1日目。メカス×ゲリンの往復書簡はゲリンによる「反射」の話から始まる。「いい反射が撮れそう」だと、最近作『ゲスト』のように外へ飛び出しアスファルトに反射する自身の姿、そして目的の回転ドアに反射する行き交う人を次々とカメラに収め…

『人生はビギナーズ』(マイク・ミルズ/2011)

マイク・ミルズの最新作『人生はビギナーズ』(来年2月に日本公開)では、異なる時代を生きた父と息子の恋とアメリカの物語がパラレルにフィルムに描かれるのではなく、現行するキラメキと回想のキラメキとが変異的な編集で頻繁に、そして高速度にクロスす…

『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』(ルパート・ワイアット/2011)

『猿の惑星:創世記』の不意打ち感がハンパないのは、ルパート・ワイアットが、サム・ライミやトニー・スコット以降の次世代の映画作家である、という新鮮なオドロキによるものだけでなく、この映画作家の題材に対するケリのつけ方にひどく感銘を受けたことに…

『5windows』(瀬田なつき/2011)

≪港のスペクタクル≫建築×映画×音楽×アートプログラム@黄金町で上映された瀬田なつきの新作『5windows』に行ってきた。「5つの空間に散りばめられた短編映画」(黄金町を歩くのです)という特殊な上映形態を持つこの作品のファーストインパクトに、コインパ…

レオス・カラックスの新作『Holly Motors』

レオス・カラックスの新作『Holly Motors』にカイリー・ミノーグが出演しているんだそうです!既に撮影現場のスチールが30枚ほどアップされています。実はかなり前に噂があったのですが、ガセだとばかり思い込んでいました。さて、このカイリーの髪型は”ジ…

『ピラニア3D』(アレクサンドル・アジャ/2010)

リチャード・ドレイファスが早速ピラニアの最初の餌食となるファーストシーンの、ビッグバンを予感させる大地の轟きのような、素晴らしい波の「蠢き」から始まる『ピラニア3D』は、ジャンル映画としての紋切り型をトレースしつつ、新たな景色を切り拓くこ…

Yekaterina Golubeva

『ポーラX』(レオス・カラックス)の主演女優カテリーナ・ゴルベワが、44歳の短い生涯を終えてしまった。スクリーンの上でのカテリーナ・ゴルベワは、沈黙という闇を身に纏ったかのような、あの深すぎるミステリアスな視線をこちらに向けるだけで、フィ…

『コックサッカー・ブルース』(ロバート・フランク/1972)

ローリング・ストーンズの破天荒なツアー&バックステージを追った『コックサッカー・ブルース』は、たとえばロバート・フランクが初めて映画のカメラマンを務めた『チャパクア』(コンラッド・ルークス)のようなヌーヴェルヴァーグとドラッグカルチャーに…

『Me and My Brother』(ロバート・フランク/1969)

ロバート・フランクの初長編映画『Me and My Brother』は統合失調症の主人公に関するドキュメンタリーという極めて際どい題材を、メタフィクション/ドキュメンタリーの複雑な構造で描いている。ロバート・フランクの処女短編『Pull My Daisy』を絶賛したジ…

『プル・マイ・デイジー』(ロバート・フランク、アルフレッド・レスリー/1959)

ジム・ジャームッシュがフェイバリットに挙げる写真家ロバート・フランクの撮った処女作『プル・マイ・デイジー』(ジャームッシュは同じくロバート・フランクがローリング・ストーンズを追った『コックサッカー・ブルース』をフェイバリットに挙げている)…

『破局』(クロード・シャブロル/1970)

続いてついさっき日仏で再見した個人的に偏愛するシャブロル作品『破局』。マネキン化する身体。やはり素晴らしかった。シャブロルの傑作というのは、きまって見てはいけないものを見てしまうシーンというのが紛れ込んでいるものなのだけど、『破局』におけ…

『オフェリア』(クロード・シャブロル/1963)

クロード・シャブロル特集@日仏学院にて『オフェリア』のフィルム上映。この作品を今回の特集の最大の発見としたい。墓穴からの仰角ショットで始まるこの作品は、死者が下から仰ぎ見る視点と多用される俯瞰の視点の交錯をめぐる映画だと、ひとまずは言える…

『悪意の眼』(クロード・シャブロル/1962)

横浜日仏学院にてクロード・シャブロル『悪意の眼』を再見、というか日本語字幕付きは初見。『クロード・シャブロルとの対話 不完全さの醍醐味』や、クロード・シャブロルの作品についていろいろと思考した後に体験する『悪意の眼』には、いろいろな発見があ…

VIVIAN GIRLS@渋谷WWW&下北沢ERA

現在来日中のヴィヴィアン・ガールズのライブにほとんど衝動的に2日連続で行ってきた。爆音『ローラーガールズ・ダイアリー』を体験したこのタイミングでヴィヴィアン・ガールズに会えるだなんて、世の中とても上手く出来ているとしか思えない。初めて『ロ…

『ローラーガールズ・ダイアリー』(ドリュー・バリモア/2009)

第4回爆音映画祭にて『ローラーガールズ・ダイアリー』。劇場に入ると早速ラモーンズのアルバムがかかってて、この日を楽しみにしてきた身としては、いきなり感極まるわけだけど、この日最高だったのは、多幸感に泣きっ面で劇場を出ると、2人組みのキュー…

「クロード・シャブロル特集 映画監督とその亡霊たち」

すでに3日目を迎え、劇場は大盛況なようですが、フランス映画祭2011にて「クロード・シャブロル特集 映画監督とその亡霊たち」(ユーロスペース〜日仏学院)が開催されています。と、せっかくなので今回の特集で上映される作品の中から5本ほどピックア…

『Chantrapas』(オタール・イオセリアーニ/2010)

フランス映画祭2011にてオタール・イオセリアーニ最新作。椅子に座った男2女1が三角形の「型」をつくり、互いの手と手を合わせるタッチを繰り出す冒頭から、イオセリアーニが振るう、ときに美しく、ときにくだらない「型」の連続に涙腺が緩む。汽車に…

『美しき棘』(レベッカ・ズロトヴスキ/2010)

フランス映画祭2011にてレベッカ・ズロトヴスキの処女長編。ミア・ハンセン=ラブやカテル・キレヴェレと共にフレンチ・フィメール・ニューウェイヴと括られて紹介されることもある、この若手女性監督のデビュー作は、レア・セイドゥという、ふと、まな…

『ポンヌフの恋人』(レオス・カラックス/1991)

キネカ大森にて『ポンヌフの恋人』と『トスカーナの贋作』という凄まじい二本立て。レオス・カラックスが新作『Holly Motors』の撮影に入るこのタイミングで本作をスクリーンで再見できたことが嬉しい。どこか聖地に赴くような心持ちで劇場に向かったよ。久…

『Petit Tailleur』(ルイ・ガレル/2010)

輸入DVDでルイ・ガレル監督作品。「小さな仕立て屋」と名付けられたこの中篇(44分)は、フィリップ・ガレルを父に、ジャン=ピエール・レオを名付け親に持つこの俳優の、直に撮影現場で培ってきたであろう体験が、ヌーヴェルヴァーグの嫡子を証明する…

『レースを編む女』(クロード・ゴレッタ/1977)

イザベル・ユペールに関するTVドキュメンタリー『Isabelle Huppert: tous les regards du monde』を見たら、案の定、女優ユペールが見たくなった。『ヴィオレット・ノジエール』(クロード・シャブロル)に先立つ1977年に、アラン・タネールやミシェル…