「クロード・シャブロル特集 映画監督とその亡霊たち」


すでに3日目を迎え、劇場は大盛況なようですが、フランス映画祭2011にて「クロード・シャブロル特集 映画監督とその亡霊たち」(ユーロスペース日仏学院)が開催されています。と、せっかくなので今回の特集で上映される作品の中から5本ほどピックアップした個人的なリストをここに書いておきます。以下に書くことは元よりゲームみたいなもので、単なる個人的な格好に過ぎませんが、何かの参考になることがあれば幸いです。今回のような大規模な形でシャブロル特集が組まれることは、日本では初めてのことです。なので私自身、これからシャブロルを発見していきたいという気持ちがあります。なので特集上映以降、このリストにも変化があるかもしれません。それもまた楽しみなところですね。以下日仏学院HP内の「クロード・シャブロル特集 映画監督とその亡霊たち」公式ページ。


http://www.institut.jp/ja/evenements/10843


1.『破局』(1970)
2.『ダンディ』(1961)
3.『ヴィオレット・ノジエール』(1978)
4.『気のいい女たち』(1960)
5.『夜になる直前』(1971)


個人的にとても思い入れのある『破局』を1位に挙げます。この作品のジャン・ラビエのカメラが大好きで、特に市電のシーンにはゾクゾクしますね。あとブルーフィルムが出てくるというのも個人的には大きいです。『ダンディ』は本編の自由闊達ぶりにも負けない、永遠の未来型女性ベルナデット・ラフォンが素晴らしすぎます。『ダンディ』に限らず、海の向こうの「アメリカ」という国への憧れが、シャブロル映画のヒロインには多いです。「アメリカ」は常に逃避の願望を背負わされている。これはとても興味深いことだと思っています。『気のいい女たち』はあのジェームズ・グレイがフェイバリットに挙げている以前に、シャブロルのオールタイムベストの一本としての評価が定まっていると思うし、個人的にも大好きな作品です。この作品の鮮烈な記憶と、後々『女鹿』(今回の特集にも入っています)を見たことが、シャブロルの輸入DVDを買うきっかけになりました。『夜になる直前』はアントニオーニ的な風景のラストも素晴らしいけど、物語やシーンを超越してしまう「歌」ですね。あの歌声ほど恐ろしい虚無はなかなかお目にかかれるものではないはずです。尚、『刑事ベラミー』は新作扱いとして候補から外しました。先日の大久保清朗氏の講演@アテネフランセのように、最新作『刑事ベラミー』のラストショットから過去作品に逆行していくのも面白いと思います。いずれにせよ、ジャン=フランソワ・ロジェも指摘しているように、クロード・シャブロルという映画作家は、明らかな駄作でさえ、見逃しがたい烙印を細部に残している作家です。今回の特集には入ってませんが、シャブロル自身あまりよく言っていない『十日間の不思議』(1971)でさえ、画面の陰惨さの中に、面白い細部が溢れているわけで、これは個人的に好きな作品といえます。


いとこ同志』と『美しきセルジュ』の2本には今もって発見があると思うし、『オフェリア』、『悪意の眼』、『女鹿』、『血の婚礼』、『野獣死すべし』、『愛の地獄』、『ベティ』、『肉屋』、『不貞の女』、『若鶏のヴィネガー煮込み』、『主婦マリーがしたこと』、『沈黙の女 ローフィールド館の惨劇』、『石の微笑』・・・個人的にはこのあたりかなってほとんどなんですが(笑)。尚、『たわむれ』には、急激に画面が陰惨になるシーンがあります。あのショッキングぶりはいろんな意味で忘れられません!


大久保清朗氏の講演「シャブロル映画の女たち」過去記事。
http://d.hatena.ne.jp/maplecat-eve/20110520


自伝『クロード・シャブロルとの対話 不完全さの醍醐味』に関する過去記事。
http://d.hatena.ne.jp/maplecat-eve/20110306


上から『ヴィオレット・ノジエール』、『ダンディ』、『破局』の過去記事。『破局』の記事を書いてる頃は、「ヤバイ」とか「うごッ」とかそんな感じのノリで書いてた時期で、少しだけ恥ずかしいのですが(いまも大して変わってないんだけどね、で、あんま変わらない気がするよ)。感動したということは伝わるかと(汗)。
http://d.hatena.ne.jp/maplecat-eve/20101202
http://d.hatena.ne.jp/maplecat-eve/20100914
http://d.hatena.ne.jp/maplecat-eve/20080818