ジャン=アンリ・ロジェ


今回はバスター・キートンに扮したデヴィッド・ボウイから。デヴィッド・ボウイといえば、ベルナルド・ベルトルッチの新作にイタリア語バージョンで「スペース・オディティ」が使われていたのだけど、はて、ベルトルッチの新作はどこの年間ベストリストにも載っていません。まだ映画祭でしか上映されてないのでしょうか?この3月にはイメージフォーラムベルナルド・ベルトルッチ長編監督デビュー50周年企画 <ベルトルッチ初期傑作選>のプログラムが組まれています。なんと『分身』が上映されます!でも新作『Io et Te』も見たい!酷評された『ドリーマーズ』だって結構好きなんです。


http://www.lesinrocks.com/2013/01/02/cinema/mort-du-cineaste-jean-henri-roger-11337222/#.UOR3Gv4HPCE.twitter
まずは大晦日にひっそりと亡くなったジャン=アンリ・ロジェについてレザンロック誌(フランス語)の記事。ジャン=アンリ・ロジェは当時若干20歳(!)にしてゴダールに招かれ、ジガ・ヴェルトフ集団に加入しました。ジガ・ヴェルトフ集団としては『ブリティッシュ・サウンズ』と『プラウダ』をゴダールと制作します。70年代に入ると「Cinélutte」という反体制の映画制作集団に加入することになります。80年代に入るとジュリエット・ベルトとの『雪』、『悪党岬』を共同監督で撮りあげます。63歳はあまりにも早すぎるお別れです。この記事はジャン=アンリ・ロジェの経歴を伝えるだけなので、ここからは補足します。


ゴダールの当時の妻アンヌ・ヴィアゼムスキーによれば、ゴダールは20歳の青年ジャン=アンリ・ロジェに畏怖の念すら持っていたようで、ロジェに激しく影響され、毎朝のように同じカフェ”La Favorite"に一緒に珈琲を飲みに行く仲だったそうです。ただしヴィアゼムスキーは、そのことを快く思っていなかったそうで、ロジェに家庭を壊されたとすら後年、語っています。ヴィアゼムスキー曰く、ゴダールは当時、所謂普通の映画制作の実践とはどんどん遠く離れていったものの、頻繁に彼女と映画館に行ったり、一緒に音楽を聞いたり、一緒に本を読んだりしていた。だけどジャン=アンリ・ロジェの出現によって、「音楽は政治に取って替わられた」、そうです(更に補足しますと、ヴィアゼムスキーは当時のゴダールの盟友ジャン=ピエール・ゴランのこともまったく快く思っていなかったことを後年、インタビューで明かしています)。ゴダールはそれから30年以上の年月を経て、『愛の世紀』にロジェを出演させます。このロジェの出演シーンがカフェ”La Favorite"で撮られたのだそうです。


ゴダールとの逸話は極めて重要なことですが、ジュリエット・ベルトとの関係も個人的には同じくらい重要なことです。というのもジュリエット・ベルトと共同監督した『雪』と『悪党岬』という傑作は、これからもずっとこだわっていきたい映画なので。単独監督作品としては『LULU』と『Code68』があります。『LULU』のDVDは持っているので今度見てみようかと思います。以下は当ブログで書いたベルト&ロジェの記事です。


『NEIGE(雪)』
http://d.hatena.ne.jp/maplecat-eve/20110202
『CAP CANAILLE(悪党岬)』 
http://d.hatena.ne.jp/maplecat-eve/20110205


http://www.salon.com/2012/12/29/isabelle_huppert_i_always_feel_misunderstood_yet_that_is_also_what_i_seek/?source=newsletter
こちらはイザベル・ユペールのインタビュー記事。ミヒャエル・ハネケ『愛 アムール』についてのインタビューですが、むしろ、現代において、女優であること、演じることについて語っている美しいインタビューです。「映画とはお互い(スクリーンと観客)の報せを交換するための手紙のようなものです」。いやはやユペールの紡ぐ言葉はホントに美しいね。友人がユペールの英語はとても聞きやすいと以前言っていましたが、分かります。なんて綺麗な言葉を使う女優なんでしょう。思わず読んでいて涙がこぼれてしまいました。泣いてしまうのは短いけど、やはりクロード・シャブロルについて語っている言葉です。「いつもクロードの網に捕らえられた蝶のような気分でした。でもクロードのカメラ=網に捕らえられるのは、とても心地がよかったのです」。また誤解や間違った判断を犯すことについて、人生において、いつも間違いを犯している。むしろ私は間違いを探してるのよ(笑)、と笑いとばすユペールの素敵さ。


http://blogs.indiewire.com/theplaylist/new-images-of-tony-leung-in-wong-kar-wais-the-grandmaster-20130102?utm_source=dlvr.it&utm_medium=twitter
こちらはウォン・カーウァイの新作『The Grandmaster/一代宗師』の初公開スチールがいくつか、というニュース。今年のベルリン国際映画祭でついにお披露目されます。主演はトニー・レオンチャン・ツィイー。2年連続(3年?)でカンヌを逃すって何年越しだよって話ですが(笑)。楽しみです。ウォン・カーウァイといえば、以前ツイッターでつぶやいてすごい評判のよかった『花様年華』の削除シーンを以下に。トニー・レオンマギー・チャンのひたすら楽しいファニーなダンス。これ大好きなんだよね。二人とも、か、かっこいい!これだけ見てもトニー・レオンがどれだけフォトジェニックな役者か分かります。ではまた次回。


"In The Mood For Love" deleted scene