2023年ベストシネマ(旧作)

Bildnis einer Trinkerin(1979)

旧作ベスト。すべて今年上映+配給された作品で初見・再見問わず。正直順位にあまり意味はないです。シャンタル・アケルマンなら全作品最高!と言いたくなるし、オタール・イオセリアーニもバフティヤル・フドイナザーロフも同じくです。ジャン・ユスターシュ特集は見てるとはいえ、行けなかった...。

 

2023年はオタール・イオセリアーニ映画祭、バフティヤル・フドイナザーロフ特集のパンフレットに関わらせていただき、とても光栄でした。どちらも元々好きな映画作家ですが、関わることでより深く知っていくきっかけになるわけで。あらためてオタール・イオセリアーニのご冥福をお祈りします。

ゴーストワールド』が再公開されたとか感無量です。二年前に書いた記事なのですが、まだ読んでいただけているようで、とても嬉しいです。『のら猫の日記』、『ゴーストワールド』~『アステロイド・シティ』まで、スカーレット・ヨハンソンへのリスペクトが止まりません。『ゴーストワールド』との二本立て企画で熱望するのは『のら猫の日記』かも!あと過小評価されている『アートスクール・コンフィデンシャル』。

Ghost World

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美女と野獣』について考えている時間も幸せでした。より深く知ったというより、あんまり凄さを分かってなかったなと反省しました。ティム・バートンギレルモ・デル・トロのようなゴシックな映画、ジャック・リヴェットレオス・カラックスのようなヌーヴェルヴァーグの系譜だけでなく、たとえばウェス・アンダーソンの映画を考える際にも、『美女と野獣』はめちゃくちゃ有効です。いろんな映画の源流になってるんだなあ...と。

 

そして『ひなぎく』や『書かれた顔』といった、自分にとって特別な映画について書けたのは心から幸せでした。感慨深い。『イルマ・ヴェップ』については、こんなに好きだったんだ!と自分で驚きました。以前見たときとは少し違った見方、広がった見方をするようになりました。旧作の“再発見”は、そこが面白い。年齢を重ねたり、その時代に横たわる問題意識によって、映画の別の側面が見えてくることがあります。

 

1.『アル中女の肖像』(ウルリケ・オッティンガー/1979)

Bildnis einer Trinkerin(1979)

2.『ひなぎく』(ヴェラ・ヒティロヴァー/1966)

SEDMIKRASKY(1966)

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3.『エドワード・ヤンの恋愛時代』(エドワード・ヤン/1994)

A Confucian Confusion

4.『家からの手紙』(シャンタル・アケルマン/1977)

News From Home(1977)

*以下は同じくシャンタル・アケルマン特集第二弾の上映作品

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5.『書かれた顔』(ダニエル・シュミット/1995)

The Written Face(1995)

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6.『イルマ・ヴェップ』(オリヴィエ・アサイヤス/1996)

Irma Vepp

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7.『蝶採り』(オタール・イオセリアーニ/1992)

La chasse aux papillons(1992)

8.『ルナ・パパ』(バフティヤル・フドイナザーロフ/1999)

Luna Papa(1999)

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9.『ロアン・リンユイ/阮玲玉』(スタンリー・クワン/1991)

阮玲玉/Center Stage(1991)

10.『美女と野獣』(ジャン・コクトー/1946)

La Belle et la Bête(1946)

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次に2023年の公開と関係ない映画のリスト。同じく初見・再見問わずですが、初見が多いかも。関わる作品のリサーチで見たものが多いです。『それでも私は生きていく』に引用された『The Wonderful Lies of Nina Petrovna』等。そしてついについに見ることのできたジュリエット・ベルトの最後の監督作品。思いのほかベルト本人が出演しています。ベルトの監督作品は4作品コンプリ!すべてが傑作でした。

Damia: Concert en velours noir(1989)

Pascal Ogier in Ghost Dance(1983)

1.『Damia: Concert en velours noir』(ジュリエット・ベルト/1989)

2.『カオス・シチリア物語』(ヴィットリオ&パオロ・タヴィアーニ

3.『カンヌ映画通り』(ダニエル・シュミット/1982)

4.『Pytel blench』(ヴェラ・ヒティロヴァー/1962)

5.『The Wonderful Lies of Nina Petrovna』(ハンス・シュワルツ/1929)

6.『Ghost Dance』(ケン・マクマラン/1983)

7.『Les années 80』(シャンタル・アケルマン/1983)

8.『アニエス・vによるジェーン・b』(アニエス・ヴァルダ/1988)

9.『Swimming to Cambodia』(ジョナサン・デミ/1987)

10.『The Staggering Girl』(ルカ・グァダニーノ/2020)

11.『Primrose Hill』(ミカエル・アース/2007)

 

2023年はジェーン・バーキンがいなくなった一年でもありました。かつて『アニエス・vによるジェーン・b』の中でジェーンは「いつか家族の映画が撮りたい」と語っていました。その願いはアニエス・ヴァルダの『カンフー・マスター』を経由して、ジェーン自身によるセルジュ・ゲンズブールのドキュメンタリー作品、そして真に“家族の映画”といえるシャルロット・ゲンズブール監督作品『ジェーンとシャルロット』で結実します。この作品にはシャルロットにしか撮ることのできない絶対性があります。とても美しい作品。あらためてジェーン・バーキンを追悼します。

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