キネマ旬報 2022年5月上下旬合併号

Jeanne Dielman

キネマ旬報シャンタル・アケルマンの『ジャンヌ・ディエルマン』評「美しい事故」と、ミア・ハンセン=ラブの日本未公開作『MAYA』評「透かし絵としての身体」を寄稿させていただきました!

若干25歳のシャンタル・アケルマンの撮った『ジャンヌ・ディエルマン』は、とてつもない傑作です。世紀の傑作といっても、まったく過言ではない。ガス・ヴァン・サントトッド・ヘインズをはじめ、ソフィア・コッポラグレタ・ガーウィグ、、、本当にいろんな映画作家がこの傑作から影響を受けています。

 

シルヴィー・テステューの言葉から解題する記事にしてみました。『囚われの女』等に出演した彼女の言葉は、シャンタル・アケルマンの映画を適確に表わしています。

 

「物事が正確に行われたときにこそ、事故は最も美しくなる」

 

以下、シャンタル・アケルマンに捧げられた言葉を。

 

「(『Toute une Nuit』)は、シャンタル・アケルマンの物語であり、女性映画作家の映画でもある。私にとって、すべてが詰まった作品でした」(クレール・ドゥニ

 

「何よりも、映画学生だった私に計り知れない印象を与えたのは、『ジャンヌ・ディエルマン』を発見したことでした。それ以来、何度も見ていますが、彼女がこの映画で爆発させた境界、キャラクターとの関係性の発明に、今でも驚かされています。『ジェリー』、『エレファント』、『ラストデイズ』などの映画を作ったとき、それは私にとって不可欠な影響でした」(ガス・ヴァン・サント

 

「映画に対する考え方が変わるような体験でした。家事という女性のルーティンに映画が寄り添うという試みと、台所にいる彼女に絶対的に対峙する小津的なカメラ。そのすべてが想像を絶する感情を呼び起こさせたのです」(トッド・ヘインズ

 

「彼女の作品は、すべての要素を結びつける巨大な叙事詩のようなものだった。それこそが、”彼女の美しさ”だった」(ジョナス・メカス

 

シャンタル・アケルマン映画祭は4/29から開催!!!

chantalakerman2022.jp

 

MAYA

美しい新作『ベルイマン島にて』が公開中のミア・ハンセン=ラブ。一つ前の作品『MAYA』は、インドへの旅と同時進行で書かれた文字通り「冒険」的な作品です。そしてこの作品は、『ベルイマン島にて』やミア・ハンセン=ラブのコアとつながる重要な作品でもあります。今回の記事ではミア・ハンセン=ラブの「身体に宿る彩度」について書いてみました。

 

個人的にミアさんの映画は、いつも二回目に見たときこそ深く感銘を受けます。演出が本当にさり気ないので、結構一回目だと、気づけないことが多いです。刺さる人にはすごく刺さると思う。そうでない人には、なんとなく過ぎ去ってしまうんじゃないかな?という気がしなくもないです。しかし、すべての映画はそういうものでもあります。

 

構造的だけど直感的でもあるというか。ミアさんの映画は自分にとって特別だなと改めて感じています。以下、ミア・ハンセン=ラブによる、とても示唆に富む言葉。『ベルイマン島にて』の理解にも確実につながっています。

 

「私の映画では、行動の原動力は、ある場所から別の場所への移動であることが多いのです」

 

「この映画を彼女に合わせました。必ずしも彼女が話す内容が重要なのではなく、話し方や服装が重要なのです」

 

「履歴に書かれている情報よりも、話し方やリズム、動き方など、日常の具体的な事柄の中にこそ、キャラクターの真実があると信じてきました」

 

「私の映画はいつも「現在」なのです。キャラクターを定義する理論的な考えではなく、その瞬間の真実で、キャラクターを具現化しようとする試みなのです。彼はこうだ、彼女はこうだ、というようなものではありません」

 

「情熱的でありながら、どこかよそよそしさがある」

 

ベルイマン島にて』は、公開中!!!

bergman-island.jp