2010-01-01から1年間の記事一覧

『Le voyage aux Pyrénées』(アルノー&ジャン=マリー・ラリュー/2008)

輸入DVDでアルノー&ジャン=マリー・ラリューによる旧作(『ピレネーへの旅』)。先日当ブログで紹介した快作にして傑作『世界最後の日々』(今秋日仏学院にて上映決定)の胎芽は既に本作にあった。と同時に『ピレネーへの旅』はサビーヌ・アゼマとジャ…

『ゾンビランド』(ルーベン・フライシャー/2009)

チネチッタ川崎レイトにて『ゾンビランド』。上下逆さにされたカメラが燃え上がる星条旗を捉えたそのバックに、ジミヘンが演奏するアメリカ国歌が爆音で鳴り響く、というファーストショットから、この作品の価値を信じていいと思った。このような精神はアメ…

「ペドロ・コスタ特別講座」@東京造形大学

東京造形大学にてこの度客員教授に就任したペドロ・コスタによる特別講義。いろいろと想定外のことが起きたので30分ほど遅刻したものの(12号館を一緒に探してくれたムサビの学生3人に感謝)、優れた教育の現場を目の当たりにしたことに感銘を受け、ま…

『アニキ・ボボ』(マノエル・ド・オリヴェイラ/1942)

アテネ・フランセにて「ポルトガル映画祭2010」のプレ・イベント「ペドロ・コスタ×ポルトガル映画史」。オリヴェイラ『アニキ・ボボ』の上映後にポルトガル映画史を語るペドロ・コスタの講演付き。ペドロ・コスタの語る「主観のポルトガル映画史」の内容…

『すべてが許される』(ミア・ハンセン=ラブ/2007)

横浜日仏学院シネクラブにてミア・ハンセン=ラブの処女長編。傑作『あの夏の子供たち』を経た後にこの処女長編を体験するとミアが映画作家として設計するタイム感がより鮮明に浮き上がる。”時間の積み重ねにこそ興味を持っている”と語るミアの作品では記憶…

『海外実験アニメの古典たち 全14篇』

イメージフォーラム・フェティバル2010@横浜美術館にて「海外実験アニメーションの古典たち 横浜美術館所蔵フィルム傑作選」。実験映画の古典を体験する上でよく言われるのは、これらの挑発的な創造が映像史の推移において、どれだけ日常に普遍化された…

『Les derniers jours du monde』(アルノー&ジャン=マリー・ラリュー/2009)

輸入DVDにてラリュー兄弟&マチュー・アマルリックの新作。終末的世界を全裸で走りぬけるアマルリックが痛快、という触れ込みや無国籍でビザールな予告編から、かなりの期待を寄せていた本作。結論から言えば、『Les derniers jours du monde』はとてつも…

『ウィンブルドン・スタジアム』(マチュー・アマルリック/2001)

日仏学院「ジャンヌ・バリバール特集上映」追加上映にてマチュー・アマルリック監督作品。英語字幕付き。前回は無字幕での上映だったためか雰囲気でしか掴めなかったアマルリックの意図が、言葉を付け加えることにより鮮烈にして鮮明な形で体に染み渡った。…

『囚われの女』(アンリ=ジョルジュ・クルーゾー/1968)

国内版VHSにてクルーゾーの遺作『囚われの女』。日本劇場未公開ビデオスルーの作品。この若干ダラッとした演出で紡がれた快作を『真実』→『地獄』の流れを踏まえた上で見るのはとても興味深い。『地獄』で用いられたオプアートの騙し絵のような眩暈を起こ…

『真実』(アンリ=ジョルジュ・クルーゾー/1960)

輸入DVDでアンリ=ジョルジュ・クルーゾー&ブリジット・バルドー『真実』。プロデュースはクルーゾーに心酔する狂人ラウール・レヴィ。撮影中にクルーゾーがバルドーに夢中になってしまったことが、ヴェラ・クルーゾーの服毒自殺の直接の起因だったとす…

『シルビアのいる街で』(ホセ・ルイス・ゲリン/2007)

日仏学院先行上映にてホセ・ルイス・ゲリン『シルビアのいる街で』。祝☆公開決定記念ということで、この傑作を当ブログで扱うのは3度目だけど、かまわず書いておく。ペドロ・コスタ『何も変えてはならない』と共に全面的にプッシュしたい。さて、本日は上映…

『白痴』(ピエール・レオン/2008)

日仏学院「ジャンヌ・バリバール特集上映」にてピエール・レオン『白痴』。ユニークな才気を感じさせる中篇『モッズ』→大傑作『フランス』をモノにしたフランス映画期待の新星セルジュ・ボゾンも出演しているこの作品。上映後のジャンヌ・バリバール自身の話…

『何も変えてはならない』(ペドロ・コスタ/2009)

日仏学院「ジャンヌ・バリバール特集上映」にてペドロ・コスタ最新作。モノクロの強烈なコントラストが臨界点まで振り切れたかのような本作の美しさに、ただひたすらに圧倒された。スバラシイ。ゴダールの声(「何も変えてはならない。すべてを変えるために…

『二人の殺し屋』(ラウール・レヴィ/1965)

輸入DVDにて”奇跡の映画を作った男”=ラウール・レヴィの監督作品。プレ・ヌーヴェルヴァーグ期にロジェ・ヴァディム&ブリジット・バルドーを発掘、『素直な悪女』を大ヒットさせたことや(『素直な悪女』はトリュフォーやデュラスに擁護された)、ゴダ…

『アウトレイジ』(北野武/2010)

地元シネコン109シネマズ横浜にて北野武最新作。いろんな方面の前評判から「北野武復活」のウワサは聞いていたのだけど、復活もなにも個人的には『TAKESHIS’』という作品に強い感銘を受けた記憶はまだ新しく、所謂「事故後」という、一部で北野武…

ミラーボールの神様

この退屈な国には もうお金がないわ 資本主義はきっと 恋愛よりも難しいのね ジュテーム、ジュテーム、ジュテーム、ジュテーム でもお金がないの (「ジャンニ・ヴェルサーチ暗殺」) なんとなく音楽を取り巻いている状況に合ってる言葉だと思ったので。もっ…

『やくたたず』(三宅唱/2010)

CO2映画祭@池袋シネマロサで上映された三宅唱監督の『やくたたず』には撮影や編集の活劇的なテクニカルな画面の動きよりも、たとえば少年が手の平を開いて「ボーン」「バーン」と言うリズム(ちょっとHIPHOPのライミング的なオモシロさがある)の方にこ…

ぺぺ・トルメント・アスカラール@恵比寿リキッドルーム

ゴダール生誕80年を祝う生誕5周年のぺぺ、ということで恵比寿リキッドに行ってきました。口ロロのDJが終わってゲストで出演のDE DE MOUSEのバンドセットが異様にテンション高くフロアが温まったところでDJ菊地成孔が登場。序盤のアンチダンス=脳内ダ…

『あの夏の子供たち』(ミア・ハンセン=ラブ/2009)

「これからどうなっちゃうの?」 「大きくなって 大人の女になって すごく美人になって 恋人ができる」 ライブ前の空き時間に再見したミア・ハンセン=ラブ『あの夏の子供たち』に再度涙した。『あの夏の子供たち』がどういう終わり方をするか知った上で体験…

『L'enfer d'Henri-Georges Clouzot』(Serge Bromberg&Ruxandra Medrea/2009)

輸入DVDでアンリ=ジョルジュ・クルーゾー未完の『L'enfer(地獄)』の残されたフィルムを復元+物語を補足する映像の追加+当事者の証言で構成され世紀を跨いで披露された『アンリ=ジョルジュ・クルーゾーの地獄』。昨年のカンヌで上映され世界各地の映…

『アウト・オブ・ブルー』(デニス・ホッパー/1980)

アウト・オブ・ブルー デラックス版 [DVD]出版社/メーカー: パイオニアLDC発売日: 2001/12/21メディア: DVD購入: 1人 クリック: 62回この商品を含むブログ (3件) を見る前もって予告されていたデニス・ホッパーの死には、荒野に吹く最後の風のような寂しさと…

『ポーラX』(レオス・カラックス/1999)

第3回爆音映画祭にて『ポーラX』、『ジャン・ブリカールの道程』、『JLG/自画像』『Anchorage投錨地』の4本立て。すべて再見。ゴダールやストローブ=ユイレを差し置いてカラックスの爆音体験に胸が躍っていた。カラックスの映画を箱で体験するという…

「ぼくたちは何だかすべて忘れてしまうね」

岡崎京子に強い思い入れがあるすべての人と同じように私にとっても岡崎さんは「著作をすべて読んでます」では済まされない存在です。だから昨日の小沢健二のライブの報告に胸がいっぱいになって泣いたあげく言葉を失くしました。岡崎さんのある意味で止まっ…

『ローラーガールズ・ダイアリー』(ドリュー・バリモア/2009)

銀座シャンテ・シネにて楽しみにしていたドリュー・バリモア初監督作品。思わず立ち上がって「ロックンロール!」と叫びたくなるような、スクリーンの女優たちと手をつないで踊りだしたくなるような、痛快な作品だった。横一列に並んだ化粧台に向き合う白い…

『Film Socialisme』(ジャン=リュック・ゴダール/2010)

カンヌお披露目と同日にフランス「FilmoTV」有料限定配信で体験することができたゴダールの新作『Film Socialisme』について、ゴダールのボイコット事件を挿んだこの段階で何かを語るのに、やや複雑な思いはある。ここはゴダールに倣ってその沈黙の意志、闘…

『コロンブス 永遠の海』(マノエル・ド・オリヴェイラ/2007)

岩波ホールにて『ブロンド少女は過激に美しく(仮題)』(←スゴイ邦題!)の公開も楽しみなオリヴェイラの近作。齢101歳(撮影時は99歳?)のオリヴェイラはデジタル撮影を択んだわけだけど、冒頭から思いっきり「フィルムの画面」のような、いつもと変…

『勝利を』(マルコ・ベロッキオ/2009)

イタリア映画祭2010で体験することができたマルコ・ベロッキオの新作『勝利を』の全ての画面/音響が放つ、熱情というより激情の爆弾投下に、未だ言葉が出ない。これほど打ちのめされる映画体験をしてしまった後、一体どうやって映画と接していけばよい…

『母の微笑』(マルコ・ベロッキオ/2002)

イタリア映画祭2010にてマルコ・ベロッキオの旧作『母の微笑』。原題を「宗教の時間」。手前に座る主人公(画家)の奥さんを跨いで向こう側の窓枠内で子供(少年)が発狂したような叫びをあげる冒頭。「僕の頭から出て行け!」。母に抱きかかえられるこ…

『トラッシュ・ハンパーズ』(ハーモニー・コリン/2009)

イメージフォーラム・フェスティヴァル2010にてハーモニー・コリンの新作。VHSの撮影素材を恐らく古いテープに幾重に渡ってダビングした荒々しい画質(一昔前の防犯カメラ並)のこの作品は、処女作『ガンモ』以前の獰猛さで『ジュリアン』を撮ったよ…

『ポケットの中の握り拳』(マルコ・ベロッキオ/1965)

アテネフランセ「シネマテーク・ジャパニーズ・アーカイヴス・セレクション」にて。ようやく見ることのできたベロッキオの処女作『ポケットの中の握り拳』は思い描いていた以上に奇天列な作品だった。ルー・カステル(青山真治『赤ずきん』の存在感が記憶に…