『スモーキング』(アラン・レネ/1993)


こちらは90年代アラン・レネ。本来なら『ノー・スモーキング』と併せて体験するべきだけど事情によりタイムアップで無念の帰路に。ただこの作品の絵の中の絵本のようなフレーム展開の素晴らしさは『六つの心』や『風にそよぐ草』へ確実に受け継がれている。ということを発見できたのはとても大きかった。撮影はレナート・ベルタ。サビーヌ・アゼマとピエール・アルディティというレネ組による一人何役の「二人だけの舞台」でありながら、この豊穣さはどうだ。ギリギリ絶妙なところで知育番組と隔てるようなセット(まさに絵の中の絵本)でありながら、アイディアのあらゆるパターンが展開される。なにより不思議の国を彷徨うアリスのようなサビーヌ・アゼマの神懸ったコメディアンヌぶりを思う存分堪能できる。どこかサイレント映画のようなやや大袈裟な身振りが大いに際立っている。ゴリラに出会いますからね。あのエピソードが好きです。とはいえやはり感動的なのはサビーヌ・アゼマありきのあらゆる意味のフレーミングです。これは絶品!