『黄金の男』(ジャン・ベッケル/1964)


『境界線』のジーン・セバーグに痺れたので、未見のセバーグ出演作を。これはジャック・ベッケルの息子ジャン・ベッケルが撮った、ジャン=ポール・ベルモンドとの再共演作。『勝手にしやがれ』の二人が!というだけで、どうしようもなくワクワクすると同時に、当然のことながらアンフェアに見てしまう可能性を孕んでいるわけで。さらに向こう見ずなベルモンドとハスッパなセバーグというキャラクターまで被っているのだから、ことは深刻だ。しかし結果的には手法云々を関係なしに『勝手にしやがれ』との差異がより浮き彫りになり、個人的には楽しめた。ここでのベルモンド&セバーグには余裕があるんだよね。既に大スターだから。そう考えるとゴダールはなんとも罪深いタイミングで2人を撮ってしまったいうことになる。2人をドキュメントしてしまったというか。それがセバーグにとっての幸せだったかはさておき。



ベルモンドの運動神経のよさに痺れる。実際この作品ではベルモンドが走ってるシーンばかりが記憶に残る。猛スピードの車と全力疾走。追っ手の挟み撃ちにあったベルモンドが反転して猛スピードの車を傾斜のきつい道なき道にダイブするシーンは本作のハイライトだ。セバーグは黒サングラスをかけて、ヤンチャな彼に対峙する。セバーグがベッドシーンにおいてもサングラスを外さないというアイディアにグッとくる。そう、二人はキスをする。たとえセバーグの裏切りがあっても、その後がある。だからこの作品はやはり『勝手にしやがれ』の番外編なのだ。あの2人が裏切りの末にするキスに、どうして感動せずにいられるだろうか?とてつもない傑作と主張する気はないものの、とても心に残る映画だった。そして驚くなかれ。セバーグの名はオルガなんだよ!