『バナナの皮』(マルセル・オフュルス/1963)


輸入DVDでマルセル・オフュルス『バナナの皮』、無字幕で。あのマックス・オフュルスの息子、マルセル・オフュルスですが、ほとんど日本では紹介されていない作家ですね。『バナナの皮』はレアグルーヴ大好きっ子の間ではサントラの方が有名で、実際、ジャン=ポール・ベルモンドの演奏するウッドベースの運指アップから始まるというグルーヴが渦巻くご機嫌な作品なのです。ベルモンドの部屋にはクインシー・ジョーンズのポスターが貼られている。ジャズワルツ風のテーマがまた素晴らしくて、ベルモンドが口笛でそのメロディを吹いたりするシーンとか、ホロ酔い加減でホテルの廊下でジャンヌ・モローとワルツを踊りだすシーンとか、泣ける。スウィングル・シンガーズの人が作ったというジャンヌ・モローが唄う「EMBRASSE-MOI」はキラーチューンです。


元妻のジャンヌ・モローとベルモンドが結託して詐欺を働くという御話なのですが、コート・ダジュールをはじめロケーションがデラックス(派手とかじゃなくて何処を撮っても画になる羨ましい感じなのです)で、海岸を馬に乗って駆け抜けるとか、砂丘の高低差とか。ハイライトはベルモンドとジャンヌ・モローが殴り合いの”演技”をするシーンだろうか。隣の部屋で聞き耳を立てる男に向けていろんな音を出しては壮絶な喧嘩の”演技”をして追い出すシーン。そしてとりわけロマンチック且つキュートなのは高飛び成功後のキスシーン。満席の旅客機の中、キスを交わす二人以外、みんな新聞で顔を隠している、というラスト。とても可愛らしい作品です。


ジャンヌ・モローの唄った曲といえば「Quelle Merveille Ton Cceur」を一時期ずっと聴いていました。たしかア・プレ・ミディにも入ってたと思う。せつない。

つむじ風

つむじ風