『女は男のふるさとヨ』(森崎東/1971)


異形の傑作ということなら間違いなく『特出しヒモ天国』に軍配があがるのだけど、私はこちらの作品にひどく感銘を受けた。父と母の情事の声を2階で静かに聴き入る(娘たち)→寝ている彼女らをバタバタと踏みつけていく、という見事な空気の壊し方に感激する。警察署での凶器を片手に涙ながら訴える母のアクション。そして緑魔子の花嫁姿の愛らしさ。トラックが向こう側へと遠ざかっていくラストショット。


このバラバラにして喜劇と悲劇の間を激しいスピードで行き来/転調していく物語は、映画の幕を閉じても実のところ何も問題が解決されていない。そこが深く泣ける。人生の内で解決できることなんて、これっぽっちにすぎないでしょう。むしろ解決できないことの方が多いわけで。一つのポエジー(又はブルース)が何かと絡まって美しいのではなく、それぞれのポエジーがとても親密な距離の中で平行線を辿り続ける様、それを情緒だと感じる。大傑作。


24日には森崎東監督と緑魔子(!)さんのトークがあるらしいです。