『Enfances』(イジルド・ル・ベスコ他/2007)


こちらは映画作家の幼少期をフィクションとして描いたオムニバス映画。イジルド・ル・ベスコはオーソン・ウェルズの幼少期を担当している。クロティルド・エスムやエマニュエル・ベルコ(こちらはル・ベスコ作品に出演)といった女優も出演している。監督の表記がないまま進むのでこちらが試されてるような楽しさがあるのだけど、最終的に確認したところ個人的に面白いと感じたのがイジルド・ル・ベスコと、ジャック・タチの幼少期を描いたジョアナ・ハジトゥーマ&カリル・ジョレイジュだったことが判明。後者はフィルメックスで『完全な一日』と『私は見たい』が上映されたこともある作家で、画像にもメインで載っている記念写真の一幕。こう見ていくとやはり短編は欲張らなければ欲張らないほどいい出来になるような気がする。詰め込みすぎの作家ほどツマラナイ傾向にあった。


イジルド・ル・ベスコの短編は一言でいえば「奇跡」を描いているのだけど、そのあっけらかんとした省略と伏線の張り方を頼もしいと感じた。ヒゲを片方書き忘れた太っちょの子供が衣装を着て親の前で演技する冒頭からツカミがよい。母親があっという間に倒れ、ベッドに横たわる死んだ母親の顔をじっくりと見つめるカメラがよい。わりと端整な顔立ちの少年を選んだ他の参加作家とは一線を画している。このセンチメンタルな作品は太っちょで聞き分けの悪そうな子供の顔を選んだ時点で成功している。