『イングロリアス・バスターズ』(クエンティン・タランティーノ/2009)


実は既に3度目。やっぱ泣ける。どこまで好きなんだという。メラニー・ロランの経営する映画館の看板が「G.W.パブスト」から「アンリ=ジョルジュ・クルーゾー」に張り替えられていたりとか一度目にはスルーしてしまった細部の発見は多々あれど、『イングロ〜』は細部を掘り下げることにあまり意味を感じないというか、もっと大きく息を吸うように接して欲しい作品ですね。


『イングロ〜』はタランティーノ信仰告白であるだけでなく、信仰における弊害を包み隠さず出し切っている作品だと思う。映画や女優(女性)への狂おしい愛と信仰が、自滅ギリギリのところで踏ん張っている。ブルージーなほどに。たとえば「愛は世界を救う」なんて言葉はあるけれど、振りきれ方さえ一歩違えば「愛は世界を壊す」だろうし、もっと言えば「愛は愛そのものを壊す」ことだってある。狂おしいほどの愛は相手に呪われてしまったという憎しみと常に背中合わせなのだと思う。『イングロ〜』が感動的なのは、映画に呪われてしまった者の絶望的な悲喜がスクリーンから放散されるだけでなく、此処で闘ってやるんだ、此処で踏ん張ってやるんだ、という決意が画面に漲っているからで、ブラピのラストの台詞には、だからこそ泣いてしまう。


ところでメラニー・ロランばっかり絶賛されているようだけど、ダイアン・クルーガーだって負けないくらい素晴らしいと思いますよ。クリストフ・ヴァルツに責め立てられるメラニー・ロランと同様のシーンを繰り返す、あの涙の溜め方が忘れられない。