『パリ・オペラ座のすべて』(フレデリック・ワイズマン/2009)


これは最高の作品ですね。まるで最初のショットが生まれたときからマスターピースとして宿命付けられているような画面の充実。これを「ワイズマン・マジック」と一言で片付けてしまってよいのか?とにかくスゴイ映画だった。個人的にベストダンスは女の子たちがピアノを囲んで順番に絶叫する幕。バレエダンサーはダンスに必要とされる直線的な筋力を隠しながら、あくまで宙を踊るような軽やかさを表現しなければならない。どこまでも音符のようなダンス。壁一面の鏡の前で振付師の手本とダンサーの舞が並走する全てのシーンが感動的だ。バレエダンサーとは「修道女でありボクサー」というモーリス・ベジャールの言葉が響く。また40歳で定年後の年金の話になる件では、経営側の素人とは思えない演説が素晴らしい。ところでワイズマンの映画で何故かWARP系のエンディング曲が流れるのは新鮮だった。客足好調。この作品がシネコンにも進出しているのは単純に凄く嬉しい。また行きます。