2021年ベストシネマ

【新作ベスト】

 

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Never Rarely Sometime Always

 

1.『17歳の瞳に映る世界』(エリザ・ヒットマン

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Never Rarely Sometime Always

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Never Rarely Sometime Always

 

2.『ショック・ドゥ・フューチャー』(マーク・コリン)

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Choc du Futur

3.『Petite Maman』(セリーヌ・シアマ)

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Petite Maman

4.『春原さんのうた』(杉田協士)

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Haruhara-san's Recorder

5.『The Tsugua Diaries』(ミゲル・ゴメス)

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The Tsugua Diaries

6.『逃げた女』(ホン・サンス

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The Woman Who Run

7.『ビーチ・バム』(ハーモニー・コリン

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The Beach Bum

8.『クルエラ』(クレイグ・ギレスピー

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Cruella

9.『ONODA 一万夜を越えて』(アルチュール・アラリ

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ONODA

10.『ラストナイト・イン・ソーホー』(エドガー・ライト

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Last Night in Soho

11.『Louloute』(ユベール・ヴィエル)

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Louloute

12.『社会から虐げられた女たち』(メラニー・ロラン

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Le Bal Des Folles

分かったような顔をしていない映画に強く惹かれる。『17歳の瞳に映る世界』には、十代の二人の女性が直面せざるを得なかった悲痛な旅が描かれている。エリザ・ヒットマンは、この旅を「ロードムービー」として描き、二人の背景に忍び寄る世界の「気配」を掬い取っていく。この作品の色調のように、ひどく冷えきった世界の気配。同一のフレームに収められた二人の女性の間に生まれる物理的、精神的な距離感。その脆く崩れ去りそうな空気だけが、この映画を成立させている。ギリギリの感情の糸で紡がれているこの傑作は、まさしく彼女たちが世界に向ける「瞳」に関する映画だ。ここでは彼女たちが世界の気配に立ち向かっていく瞳、気配に怯える瞳が、痛ましいまでにフィルムに記録されている。作品を作ることによって、彼女たちといることによって、何かを探していくような、そんな手触りがある。彼女たちは、そして映画は、決して分かったような顔をしていない。

 

年末に素晴らしい未公開作品に連続で出会ってしまったので、急遽リスト変更。『春原さんのうた』は一週間後には公開されるので敢えてフライング。この作品のドアはいつも開かれている。世界の気配を部屋に取り込むために。とても美しい映画だった。

 

公開された作品と配給の決まっていない作品を元に。今年は『アネット』と『アネット』と『アネット』の年だったのだけど、それを入れてしまうと、あれもこれも入れなければならない公開の決まっている作品が出てくるので、来年にとっておく。

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Le Bal Des Folles

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Le Bal Des Folles

メラニー・ロランの監督作品については触れておきたい。メラニー・ロランの作品はマイク・ミルズ人生はビギナーズ』に影響を受けたデビュー作から追ってきた。第二作『呼吸』の衝撃は、いまだ鮮烈に脳裏に焼き付いている。そして『ガルヴェストン』等を経た新作。邦題は『狂女たちの舞踏会』のままが相応しいと思う。メラニー・ロラン×ルー・ドゥ・ラージュのコンビは、グレタ・ガーウイィグ×シアーシャ・ローナンと双璧のコンビとなった。今年『約束の宇宙(そら)』が公開されたアリス・ウィノクールのデビュー作『博士と私の危険な関係』と同じくシャルコー氏による神経治療が描かれた本作は、より「魔女狩り」の要素が強い。ブレッソンに挑戦するかのような画面構築が冴えわたっている。久しぶりにメラニー・ロラン自身も出演しているという点も素晴らしい。アマゾンプライムで配信されているので、是非。

 

 

【旧作ベスト】

 

今年はCINEMOREさんに映画評を書くための参考資料として旧作鑑賞の割合がいつもより増えたので旧作ベストも。2022年は旧作のリバイバル上映が、既に発表されているものだけでも物凄く充実している。個人的な気分としても、新作も見つつ旧作の豊饒さに浸っていきたいなと思う。見逃していた『草の葉』は、ホン・サンスの最も美しい作品ではないだろうか?そして『ポーラX(ロングバージョン)』に感涙。

 

1.『ポーラX(ロングバージョン)』(レオス・カラックス

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POLA X

2.『ダムネーション/天罰』(タル・ベーラ

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Damnation

3.『四季』(アルタヴァスト・ペレシャン)

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Seasons

4.『草の葉』(ホン・サンス

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草の葉

5.『To Die in Madrid』(フレデリック・ロシフ)

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To Die in Madrid

6.『屋根の上の赤ちゃん』(マーク・ロブソン

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Daddy's Gone A-Hunting

7.『メイド・イン・ブリテン』(アラン・クラーク)

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Made in Britain

8.『L'oro di Napoli』(ヴィットリオ・デ・シーカ

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L'oro di Napoli

9.『トムボーイ』(セリーヌ・シアマ)

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Tomboy

10.『ピショット』(エクトール・バベンコ

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Pixote

ケリー・ライカート特集上映は最高だった!『リバー・オブ・グラス』がこれまで一番好きだったのだけど、今回の特集で『ミークス・カットオフ』が一番になった。

 

個人的にはリアルサウンドさんで書いている俳優論、CINEMOREさんで書いている映画評、キネマ旬報さん、装苑さんと、心から楽しかった一年でした。キネマ旬報さんに書いた『逃げた女』論「置き去りにされた不在」というタイトルは、昔カイエジャポンで坂本安美さんがフィリップ・ガレルについて書いた素晴らしい批評「置き去りにされた顔」へのオマージュでした。ということをこっそり。自分で書いたものの中でも、好きになれた仕事でした。

 

みなさま、よいお年をお迎えください。2022年も宜しくお願い致します。