『歌う女、歌わない女』(アニエス・ヴァルダ/1977)


実は今回の特集の中で最もフィルムで見たかった作品。あからさまに「リブ万歳」というか「闘う女」なイメージなので敬遠されがちな作品なのかもしれませんが、個人的には思い入れのある作品。さすらう女2人組、故郷喪失者の物語という時点で既にツボ突きまくりなのですが、女二人で共同でコドモを育てるとか、もう画だけで泣けてしまう。シリアスな物語には違いないけど、作品の最後で「楽天的な闘い」と述べられるように、「歌う女」のライブシーン(パフォーマンスといった方がよいか)におけるフラワーでビザールでファニーな美術にも目を奪われる。コーラス隊とか、ふわりとしたフェンダーローズの音もよい。なにより「歌わない女」の子供たちの可愛らしさですね。ドゥミとヴァルダのコドモたち。『ドキュメントする人』然り、少年時代のマチュー・ドゥミの聞かん坊ぽい佇まいは本当に美しい。この闘争の物語が受け継がれることになる少女時代のロザリー・ヴァルダ(ラストカット)がエマニュエル・ベアールに似ていることに気づく(『アニエスの浜辺』では全然別人になっちゃってたけど・・・)。名言多々。フェミニズム運動家の母の話を幼いころから聴かされていた娘(ピルの話とか既に詳しい少女)が初めての男の子とのデートで「これからどうする?君は自由だろ?」と問われ、言い放つ台詞が好きだ。


「”君は自由だろ”と男がきくのは、寝る気があるかという質問よ。
 ―――情熱がないわ。」