『アニエスの浜辺』(アニエス・ヴァルダ/2008)


こちらは間もなく公開される最新作の先行上映。「アニエス・ヴァルダによるアニエス・ヴァルダ」といった趣きのセルフドキュメンタリー。冒頭の浜辺に無数の鏡を乱立させるヴァルダのシーンからしてガーリーで夢魔なヴァルダ的世界が構築されている。黒沢さんの言うようにこの作品ではヴァルダ自身の「なんちゃって」感、セルフを撮ることへの照れが面白くて、捻りまくった美術を一枚隔てているところに自己防衛の本能が働いてるというか、その点は小泉さんも指摘していて、『歌う女、歌わない女』のように他人のためには闘うけど、いざ自分のためになると茶化すのかな?とか、そのようなことを仰っていました。自虐ネタも入ってるくらいで。ヴァルダの81年の人生が凝りに凝った美術と共に語られるわけですが、中でも個人的に興味深かったのはジャック・ドゥミとのハリウッドでの生活が語られているとこですね。若い頃のヴァルダの美しさや写真家としての実力にも驚いた。ただ、映画そのものよりも其処に映っているものの方がよっぽど面白いんじゃないか?「アニエス・ヴァルダ展」とかやったらもっとずっと楽しいのに、とも思ったり。『創造物』(傑作!)を見ているとより楽しめます。