『グラン・トリノ』(クリント・イーストウッド/2008)


地元シネコンレイトにて『グラン・トリノ』初日。予告編以外何の情報も入れずいたのだけど、まさかのまさか、こんなにチャーミングな映画だとは思ってもみなかった。イーストウッドが隣人モン族の家に訪問する完全アウェイ(合衆国国旗がなびかない世界)なストレンジャーのシーン、スーちゃんのテキトーな通訳に対するツッコミに爆笑。あれにもこれにも笑った。いや、こんなに映画館で笑ったのってホント久し振りです。










ここでのイーストウッドは『アウトロー』のように鋼のような固い唾は吐かない。『許されざる者』のように、作品に触れる者すべてに戦慄を与えるようなものではなく、それがどんな結末を迎えようと、むしろ見たことの幸福感で満たされるから不思議だ。チャーミングかと油断すれば、次の瞬間、予断ならぬ恐怖が走る。モン族のチンピラとメキシカンによる2台の車(前進と後進)を運転しながらの汚い言葉の罵り合いを見ただろうか?イーストウッドの手で銃を撃つ真似、その仕種の直後、空気が猛烈な勢いで豹変するあの呼吸(映画の呼吸)を見ただろうか?神父の、来たるべき事態への覚悟を瞬時に知覚したような「オー、ゴッド、、」の呟きを聴いただろうか?グラン・トリノを包んでいたあの白いシートを。無説明に存在感ばかり増していくピッカピカに磨かれたグラン・トリノ、いつ発進する?マジックハンドってば。次々に貢がれる料理ってば。床屋のシーンが一番笑ったかも。イーストウッドの困ったときの「ヴヴゥー」は漫画のようにチャーミングじゃないか。イーストウッド、愛犬、グラン・トリノがワンフレームに収まる並び。またしてもシクジッテしまったイーストウッドの決断、周到な準備。

オー、グラン・トリノ!これが映画だ!幸せだよ。