『3:10 TO YUMA』(ジェームズ・マンゴールド/2007)

3:10 to Yuma [DVD] [Import]

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輸入DVD。あの素晴らしい『17歳のカルテ』『ニューヨークの恋人』のジェームズ・マンゴールドによる西部劇。出来れば日本に入ってくるその日まで待ちたかったけど、未だ音沙汰なし、ついにシビレを切らして見てしまったよ。本当にジェームズ・マンゴールドという監督さんは持ってる引き出しが多彩、というか、この人何でもできちゃうんだね。デルマー・デイヴィスによる名作『決断の3時10分』よりもドンパチ度高めのリメイク。向こう側から走ってくる馬(銃を構えた複数の男たち)を正面から捉えたショット→相手側からそのまま切り返す、合戦のような銃撃戦に文字通り体が仰け反る。いや、だってさ、これだよー、思わず体が動いちゃう、この感じ。冒頭から炎が上がり家から飛び出したクリスチャン・ベイルの義足が外れるとこも、素晴らしい呼吸。



役者陣、ラッセル・クロウもクリスチャン・べイルもいいのだが、ボスの忠実なる下部チャーリー・プリンスことベン・フォスターの容赦など知るかといった雰囲気が本気で狂ってる。またマンゴールドはしっかり女優を撮ることにも抜かりがない。登場時間こそ短いものの酒場の女とベイルの妻の顔アップが本当に綺麗。憂いがある上に艶を帯びてるというか。この女優のアップの持つ艶が非常に重要なのは、たとえばべイルの妻とラッセル・クロウが交わす1対1での対話の際、心の底からこの犯罪者を畏れ忌み嫌いつつも、何処か皮膚感覚でこの男に抵抗できない金縛りのような惹かれ方をしてしまう、というその場その時限定の秒殺的な空気の変化、その微妙な感覚が表現できてるからで。


汽車の待機する音?が悲しいほど耳から離れなくなる、それぞれの押し殺した感情が言葉を発することなく錯綜するラストには、ただただ泣きました。全くもってブラボー!な傑作です。こんな傑作が入ってこない状況はちょっとマズい。日本における現代アメリカ映画を巡る諸々の批評が貧しくなりかねない、とさえ思う。


DVD見ちゃったけど、もし日本に入ってきたら真っ先に映画館行きますよ。