『処女の寝台』(フィリップ・ガレル/1969)


輸入DVDでフィリップ・ガレル『処女の寝台』。英語字幕付き。これは実験映画をメインに扱っているフランスre:voir社から出ているブツ。『現像液』(1968)もここから出てます。ブックレットにはフィリップ・アズーリによる20ページに及ぶ解説文が。


一体いつの時代の何処なのか皆目見当の付かない舞台=ロケーションでピエール・クレモンティ扮する救世主キリスト(拡声器を片手にしたキリスト!)は「僕にはできないよ」と己の直面する世界に無力感を抱え、またしても何かに失敗してしまう。冒頭の船上、母親=ズーズー(1人3役!)の前に突然びしょ濡れで現れ、父=無言の空に向かって「何故僕をこの世に落とした?」と絶叫するキリスト(←長回し)。続いてセカンドショット、サイケデリックなロックが爆音で流れる中、ロバに乗ったキリストを前方から長い長いトラベリング撮影で捉えたモノ凄い労働力を必要とする過剰で無茶な撮影が炸裂する。並走する馬に乗った仲間たち(?)との合流(←これホント超絶的だよ)を交えながら、この長いワンショットでキリストは一度もロバの手綱を握らない、というどうにも可笑しな乗り方をしていて、人を喰ったような印象を与える。


美しい円環を閉じる/閉じないラストまで奇想天外且つ無謀な移動撮影のオンパレード。これに似た映画は、、、知るわけない。しかし言うは易しです。それを実際にキメキメで可能にしてしまった若者、当時21歳(!!)のガレルの壮大な野心と桁外れの才能はあまりにも驚異的だ。まさに恐るべき子供、そしてこれぞ映画の極北。


追記*そうそう音も凄かった。悲鳴と嘲笑が10回以上リピートされたり。鳩時計がそんなに時間経ってないにも関わらず再び開いたり(音のみ)=時間の操作。昨年カンヌで上映されたガレルの新作は初の幽霊ものらしいのだけど、よく考えたらガレルの映画の細部にはホラーを感じなくもない。


ちなみにフィリップ・アズーリによるとロバに乗ったキリストの超人的な移動撮影は、ジョアン=セザール・モンテイロの『Le Bassin de J.W.』とイメージが重なると書いてあります。


何故かYoutubeが貼れないのだけど、以下に抜粋映像もあります。これだけ見てもブッ飛びですよ。NICO!
http://jp.youtube.com/watch?v=4HUF8_mh9UA