『TROIS JOURS』(シャルナス・バルタス/1991)


こちらは長編。『ポーラX』のカテリーナ・ゴルベワ主演。少量ながら台詞あり。何処でもない街、何処でもない部屋(アパートの部屋が洞窟のよう!)を彷徨するカテリーナ・ゴルベワと青年2人。引き続き広場のロングショットが素晴らしい。この2作に共通しているのはシャルナス・バルタスが水たまりの作家だということ。鳥の羽ばたきの作家だということ。上述の作品でも街中のいたるところで水たまりが出来ていた。しかしそれは致命的な災害を受けた後、といった寂びれた趣き。


ゴルベワと青年がアパートの屋根を登って窓から部屋に侵入するシーンが素晴らしい。それに気付いた浮浪者風の男性が石を投げる。目的の部屋に向かう途中、隣の窓で御婆さんと孫娘と目が合うところはユーモアたっぷりで笑える。向かいのアパートでは常時ダンスパーティーが開かれていて、その音楽は街中に響いている。ある時はラテンミュージック、ある時はスウィングジャズ。劇中ゴルベワは突発的に笑っては突発的に怒り、そして泣きはじめる。この作品でゴルベワを正面のアップで捉えるショット(3回くらい)は怖いぐらいに魅力的だ。何かを決心したかのようで同時に果てしない虚無を覗かせるその危険な眼差しに『ポーラX』を重ね合わせる。再び洞窟のようなアジト、ホームレス風の男性が話しかける。「見よ、この薄汚い私を。どうやったら私のような人間が光を浴びることができるというのだ?」。ゴルベワが不良少年に煙草を与える。広場では子供たちが爆薬を仕掛ける。街中が白煙で包まれる。汽車に乗り込み、彼らは街を出る、、。全てのショットがポエジーのようで、新しいのだけど同時に古典的な、何より突き抜けて美しい作品でした。75分は短すぎる、、。終わってほしくなかった!


シャルナス・バルタスの映画とは波長が合うのかもと思いました。退屈するどころか思いっきり耽溺してしまった。カラックスの映画が好きな人は、全然似てないにも関わらずこの映画を好きになると思います。特に根拠はないけどそう思う。日本上映は難しい、、、ですよね。フィルムで見たら緊張するでしょうね。


何度も見たい傑作です。スゴすぎるぞ、シャルナス・バルタス