My 100 Best Films of The 2010s (91-100)

91.『パターソン』/ジム・ジャームッシュ(2016)
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Paterson / Jim Jarmusch (2016)

朗読者としてのアダム・ドライバーの声の美しさに惚れ惚れする。引用される『獣人島』の原題は『Island of Lost Souls』。これほどジム・ジャームッシュの映画に相応しい言葉も他にない。ジャームッシュは「失われた魂(たち)」を主題とした映画(=島)を撮り続けている。

92.『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』/スチュアート・マードック(2014)
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God Help the Girl / Stuart Murdoch(2014)

「もし二人が結ばれなければ、私がこれまで聴いてきた音楽、見てきた映画、読んできた本は、全て間違っているってことになってしまう。」この台詞のことを思い出すと涙が止まらない。

93.『南瓜とマヨネーズ』/冨永昌敬(2017)
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Pumpkin and Mayonnaise / Masanori Tominaga (2017)

好きと言う代わりに好きな人の名前を呼ぶときの声のトーンというものは、一生忘れられないもので、臼田あさ美の「せいちゃん!」や「ハギオ!」にはそれがある。誰かをかわいいと思うことはこんなに切ないことなのか。

94.『サスペリア』/ルカ・グァダニーノ(2018)
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Suspiria / Luca Guadagnino(2018)

冒頭のクロエ・グレース・モレッツのシーンで、この違和感しか感じない不思議なカット割は一体何だろう?と思っていると、それがやがて操り人形を操る見えない怪物の視点という予感に繋がり、予感が予感を上回りとんでもないところにたどり着いてしまう恐るべき怪作。

95.『フランシス・ハ』/ノア・バームバック(2012)
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Frances Ha / Noah Baumbach(2012)

思い出すのはアパートメントの風景。そこには確かな暮らしがあって、グレタ・ガーウィグアダム・ドライバーの生活の匂いがあった。いまでも彼ら彼女らは元気に暮らしているだろうか?と思わずにはいられない、あの風景。そこに映画と時間を共有することの尊さがある。

96.『ハンター』/ラフィ・ピッツ(2010)
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The Hunter / Rafi Pitts(2010)

レオス・カラックスに師事という経歴からとても気になっていたラフィ・ピッツ。雪の風景が持つ重さが、シャルナス・バルタス経由レオス・カラックス行き(『ポーラX』期の風景)と共振する。霧の中を静かにカーチェイスする硬質な傑作。

97.『黒いヴィーナス』/アブデラティフ・ケシシュ(2010)
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Venus noire / Abdellatif Kechiche (2010)

彫刻を様々な角度から荒々しく彫り削っていくような愚直な過激さこそがケシシュの骨頂。黒いヴィーナスのいたたまれないエグさはその極北に達している。覚悟の必要な映画。

98.『ブエノスアイレス恋愛事情』/グスターボ・タレット(2011)
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Medianeras / Gustavo Taretto (2011)

都市の風景をめぐる映画。都市に流れるメロディ、都市に流れる映画。原題はMedianeras=境界壁。他人である男女がこの境界壁をどう壊していくのか、あるいはこの世界において境界壁とは何なのか?それを描出させる手法に涙。

99.『ブルーに生まれついて』/ロバート・バドロー(2015)
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Born to Be Blue / Robert Budreau (2015)

ブルーという言葉の持つ感傷の色彩の広がり。とけてしまいそうなほど甘い恋愛も、感情が滲むような諦念も、恋人に向けて歌い演奏する音の色彩の中に全てがある。

100.『小さな仕立て屋』/ルイ・ガレル(2010)
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Petit tailleur / Louis Garrel (2010)

このタイミングでしか撮れないレア・セドゥの魅力がスパークしている。レア・セドゥを最も魅力的に撮ったのはルイ・ガレル、という持論は現在に至るまで揺るがない。