『ヌーベルヴァーグ』(ジャン=リュック・ゴダール/1990)

ヌーヴェルヴァーグ [DVD]

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年明け一本目に見る映画は何がよいだろか?けっこう重要であってまるで重要ではないよな、と例年ムダに迷うことしきりなのですが、今年は一寸の迷いすら入り込む余地もなく『ヌーベルヴァーグ』を選ぶ。この作品のルプシャンスキーのカメラってば、水分をたっぷりと含んで潤い潤いお肌スベスベだよね、など思いながら2度続けて見て、そのあと初詣で熊手を買いました。ふと郵便受けを覗くと全くもってキュートな姫たちが写った年賀状とか、、そんなお正月。Yちゃんアリガトウゴザイマス!


「女とはどういう意味なのか?」と、その抱える愛がひたすら内向的に閉じる方向に向かっているかのようなアラン・ドロンとは対称的に、ドミツィアーナ・ジョルダーノの愛はひたすら外部へ向かって開かれているように見える。「愛は人から離れていく」。愛のための愛というべきか。しかしここでゴダールらしいトートロジーな突き放し。「物の本質とは・・・物であり言葉ではない」、そしてついに「芝居は終わった」のだ。いずれにせよ、アラン・ドロンが女性に振り回されているということに変わりはないのだけど。「ドロンを撮るということは一本の樹を撮るのと同じようなことだ。」(ゴダール談)とはよく言ったものです。この映画自体が一本の樹なのです。


ゴダール&ミュジーの極北としてとかく音響の凄まじさ異形さが語られる映画です。しかしルプシャンスキーのカメラといったら!森林を開放的な横移動、人物を逆光で、と早速グイッとこちらを惹き込んでやまない冒頭。各部屋に置かれたシェードランプの長い長い横移動と消灯も果てしなく素晴らしいのだけど、レマン湖船上での事故シーンが好きですね。作品中、重要なモチーフとなる「手」は勿論のこと、潜水状態の女性を船上視点のショットで捉えた画が怖いくらい美しい。