『シルビアのいる街で』(ホセ・ルイス・ゲリン/2007)


スバラシイ!!!!!この余韻と驚きは当分の間消えそうにありません。あんまりに素敵な作品だったので速報で。今夜はスコリモフスキーの登場ですよ。


<続き>
シルビアのいる街、ベッドの上、何かの深い追憶にふけるような空想にふけるような過剰に澄んだ目をした青年を捉えたファーストショット。スクリーンに直面した観客は(おそらく)男女を問わずこの青年の美男子ぶりと彼の持つ澄んだ眼差しに惹き込まれてしまうだろう。青年に掃除の呼び出しが掛かるセカンドショットを挿んでサードショット、街の風景。路地。響き渡る教会の鐘の音。この素敵過ぎるサードショットで完全に吹っ飛ばされる。そしてこの通りを行き交う人々は一人も余さず(!)この映画の名脇役となる。オープンカフェであらゆる女性をスケッチする青年。青年はノートにこう書き留める。「彼女、彼女たち」。ウェイトレスの女の子に一際明るい陽光が照らされる。たしかに彼女は主役級の顔立ちをしている。ついにシルビアか?!しかしそうではないらしい。そして風のようにスッと不意に現れるヴァイオリンの演奏者たち。


女性を見つけた青年が動き出すとカメラの動きも大胆に変わりはじめる。


この『シルビアのいる街で』という大胆な傑作の中でヒトやモノやオトは、風のようにスッとフレームに現れてはスッと消えていく。フレームもいつの間にか摩訶不思議な変貌を遂げてしまう。この、いつの間にか、というところが実に面白くて、特に驚いたのは路面電車のシーン。青年と女性がつり革に手をかけて話し合っているだけなのだけど、二人を正面から捉えた被写界深度が絶妙に浅いカメラは、二人の背景(流れる街の景色)を古典映画に見るスクリーンプロセスのようにしてしまう。いつの間にこんな摩訶不思議な画面になったの!?と気付かないくらい自然な速度、そう、風が吹くようなスピードで。


この「風」が終盤に信じられないような「主役」への変貌を果たす。
眩暈を覚えるような傑作です。是非スクリーンで確かめてください。


10/22 17:35 - 19:30 (開場17:15)
六本木会場 [TOHOシネマズ 六本木ヒルズ Screen5]
http://www.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=171


追記*厳密にはいくつかの幻惑的な空絵を挿んだ後、青年が登場するのでファーストショットではないですね。