『ミルク』(ガス・ヴァン・サント/2008)


地元シネコンにてガス・ヴァン・サントの新作。泣けた。この作品を必要以上に傑作と持ち上げるには『ジェリー』『エレファント』『ラストデイズ』への個人的な評価が高すぎるが故に難しい。しかしここには世紀の現代映画3部作(『パラノイドパーク』は敢えて含めない)では描かれなかった”中心”がある。”中心”を”人生”と置き換えてもよい。フレデリック・ワイズマン『高校』を経由した、もはやガス・ヴァンのお家芸/作家の烙印ともいえる神技的な背中追いの移動ショットが、ここでやるしかない、という最良の瞬間に披露される。オペラ劇場を経て背中ショットを挿むカタルシスへと到るラストの流れが本当に素晴らしい。いままでその透き通るようなカメラ越しに滲み出ていたガスの”語りたいこと”が、より直接的な強度を持って描かれている。ここでも「人生=映画」が浮かび上がる。まさか、ガスの映画で!そのことに深く感動した。てか、泣きますよ、このラスト。


このバイク2人乗りショットにもっと溺れていたい!だとか、嗚呼このぐるぐるショットをもっと長く!だとか、上映中何度も思ったことも告白しておく。ガス・ヴァン・サント的な技巧的で美しいショットは見事にあっさり切られている。しかしまるで機材に羽が生えているかのような透明で軽やかなカメラワークはメジャー作品に帰っても健在。