『青髭』(クロード・シャブロル/1963)


VHSで。シャブロル+オードランによるシャルル・ペローの『青髭』じゃなくて、実在した殺人鬼アンリ・デジレ・ランドリュー(チャップリンの『殺人狂時代』のモデル)をモデルにした”青髭”映画。第一次世界大戦を背景(ランドリューのようなブ男でも戦争で伴侶を失った女性たちには”安心”な存在だった!?)に未亡人たちを次々と焼却して大金を手にするランドリュー。興味深いのはドイツ人の貴婦人とのエピソード。この未亡人との逢瀬の時、ドイツ軍が降伏して戦争が終わるのだけど(教会の鐘の音が聴こえる)歓喜に湧く市民を余所にランドリューが非常にバツの悪そうな顔をしているという。


何処か無国籍なセットのような部屋は正面から全景を捉えてるせいか、まるで舞台のように見える。冒頭、公園で未亡人からの手紙を読むランドリューを広めの俯瞰で捉えるショットでは、まるで周りの人がランドリューの存在に気づいていないかのようで、彼が現実から完全に切り離されていることを印象づけている。


この映画とても面白い映画なのだけど、個人的に最も関心したのは、シャブロルが第一次世界大戦を単なる「効果」として挿入しているのではなく、そこにきっちり落とし前をつけているところだった。エライなぁというか、だからこそ、この作品は厚みがあって見通しがよいのでしょう。ランドスケープの問題です。大金を手にするため実の妻に未亡人を装いさせる詐欺行為のくだりで、当然のように躊躇する妻に向かって、次のような台詞がランドリューから放たれる。


「私はほんとは誰だ?我々は誰だ?
 お前は子供の命にかけてカトリーヌだと名乗れるか?」


アンリ・デジレ・ランドリューについては以下のサイトに概要が載っていました。てかランドリューそっくりじゃん!!この「殺人博物館」てサイト結構ドギツイのも載ってるので苦手な方は見ないほうがよいかも。個人的にはメアリー・ベル事件(子供による殺人)が最恐でした。
http://www5b.biglobe.ne.jp/~madison/murder/text/landru.html