『ディーバ』とシネマ・デュ・ルックの時代

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リアルサウンドジャン=ジャック・ベネックス『ディーバ』と「シネマ・デュ・ルック」に関するコラムを寄稿させていただきました!

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 「初めての映画作り。空は青かった。エディット・ピアフは“もっと青く”と歌っていた。空の青さだって、あなたの瞳の青さには勝てやしない」(ジャン=ジャック・ベネックス

 

ベネックスの伝記本に記された『ディーバ』の撮影記録(とはいえ、とても詩的な)にとても美しい言葉を発見したので、この言葉をテーマにコラムを書いてみました。

 

記事を書くにあたって全長編作品を見てみましたが、アントニオーニのことが本当に好きなのだなということは作品の端々から伝わってきました。ベネックスは全作品を今日の視点で見直されるべき映画作家だと強く思います。

 

『ディーバ』と『溝の中の月』で徹底的に美学を構築した後、『ディーバ』以前の短編『ミシェル氏の犬』のようなイタリア映画的なおおらかさと構成主義との融合を『ベティ・ブルー』と『ロザリンとライオン』で実験したのではないかなと思っています。ベネックスの映画美学的集大成としての『IP5』、そしてキャリア全体を俯瞰しながら自己言及するかのように撮られた『青い夢の女』。

 

なんというか映画作家としての胆力に違いを感じます。失敗を恐れない不敵さがある。『ディーバ』の台詞にあるように、「商業が芸術に合わせることはあっても、その逆はない」を生涯頑固に貫いた映画作家だと思います。以下、ベネックスの言葉をランダムに。

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「『ディーバ』は、アーティスト、ファン、創作に関する芸術的誠実さ、無限の複製、海賊盤、その技術などを扱った物語です」

 

ヌーヴェルヴァーグ映画作家やアントニオーニのような人たちは、美学や色彩の研究に非常に熱心でした。私はそういう映画を見て育ち、学んできました。アラン・レネの初期の作品、たとえば『去年マリエンバートで』などは、とても美しく、とても奇妙な作品です」

 

「『ディーバ』が最初に公開されたときは大失敗だったんだ。批評的には壊滅的な状態でした。このことは誰も知らない」

*『ディーバ』はトロント国際映画祭の観客によるスタンディングオベーションによって「発見」され、フランスに逆輸入される形で絶対的な人気を得たらしいです。

 

「『ディーバ』のセリフに戻りますが、”芸術に合わせるのは業界であり、芸術が業界に合わせる必要はない”のです」

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「私たちの時代は都市を真剣に考え始めていた。広告やネオンサインが建築物を照らしていた。都市の景観は商業的なものになったが、それは同時に詩的で非現実的な風景でもあった」

 

「無意識のうちに演劇的なものを探していました。演劇的な、舞台的な空間。(中略)私は壁を塗ることにしました。」

 

「文化が加速し始めたのは1980年代からです。それを映画で見たかったのです」

 

「私にとって演出とは、カメラ、つまりフレームから生まれるものです」

 

「昼でもなく、夜でもない、もうひとつの空間。夢の中の青・・・」

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『ディーバ』の東京での上映は間もなく終わってしまいますが、各地で上映があるそうです。この驚愕の傑作を是非!!

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