CINEMOREにタル・ベーラ『ダムネーション/天罰』評、「鎖に繋がれたメランコリー」を寄稿させていただきました。タル・ベーラの入門としても最適な作品です。この作品がタル・ベーラとの出会いだったらよかったのに!と心底思いました。例外的なくらいメランコリーが立ち込めています。ただし、そのメランコリーは鎖に繋がれたメランコリー、腐食したメランコリーなのです。恐るべき傑作。
タル・ベーラとシャルナス・バルタスとフレッド・ケレメンの三人の映画作家に関して「天罰の映画」と評した論文がSence of Cinemaに掲載されています。
初期のシャルナス・バルタスは、たとえば霧の動きを筋肉の動きを観察するかのように捉えています。そこに関係性の衝突による物語が生まれないというところに、シャルナス・バルタス映画の哲学を感じます。物語以前の映画。そこにポエジーはあっても、神秘はない。
同じくタル・ベーラは雨や霧に神秘を見出さない。雨や霧は、そこに生きる人たちの鎖となっている。これは初期の作品から『ニーチェの馬』(ミニマルでマッシヴな最高傑作だと思います)に至るまで一貫しています。
タル・ベーラという稀代の映画作家に関しては、スタイルの確立と主題(宇宙)の発見という両方の意味で『ダムネーション/天罰』を起点に考えていく必要を感じています。もしくは『秋の暦』。
タイタニック・バーのシーンにレオス・カラックス『ボーイ・ミーツ・ガール』のパーティーシーンと似たポエジーを感じます。レオス・カラックスは止まった宇宙を見上げて、タル・ベーラは沈みゆく宇宙に浸っていく、、。
タル・ベーラの映画を遠くに感じていた人こそ、見てほしい作品ですね。是非!