『シルビアのいる街で』(ホセ・ルイス・ゲリン/2007)


今年の6月に出たUK盤DVDで再見。ジャケットのデザインがクロッキー風。美しいです。スペイン盤DVD−BOXにも収録されていたスケッチ風の短編2本とゲリンのロングインタビュー、主演のグザヴィエ・ラフィット、撮影監督のNatasha Braierのインタビューが収録されています。目玉はこのナターシャのインタビューですね。「ストラスブールの街は小さくて毎日ホテルから自転車で現場に向かっていたのよ」と身振り手振りで楽しそうに話すナターシャは細身の美女。まるで女優のようなカメラマンです。ただでさえ美しい女性ばかりの作品なのに撮影監督まで美女とは。ナターシャの最新作は今年のフィルメックスで上映される『悲しみのミルク』(クラウディア・リョサ)です。楽しみだね。さてさて一年前の東京国際映画祭はどんなだったか?過去記事を探してみたら興奮がそのまま書いてあった。懐かしい。
http://d.hatena.ne.jp/maplecat-eve/20081020


ダンテの創作における永遠のミューズとなったベアトリーチェ。主人公が追い求める「顔のない肖像」の女性が、創作における崇拝の中でしか出会えない女性ベアトリーチェの肖像ならば、この女性がかつて確実に実在した(ベアトリーチェはダンテと交際することなく24歳で夭逝している)、というところに、ドキュメントとフィクションの曖昧な崩れの作用があるのかもしれない。女性の顔が死者の顔であることを想起させる痛んだ「顔」の提示のあと、乱反射する路面電車の窓にオーバーラップでピラール・ロペス・デ・アジャラの美しい「顔」のアップが映り込む、という展開に泣いてしまう。


DVDで見てもあの路面電車で二人が話すスクリーンプロセスのようなシーンは凄まじいですね。鳥肌が立った。出会いの予感は教会の鐘の音。ピラール・ロペス・デ・アジャラの別れ際の投げキッスには聖歌のレクイエム。永遠に出会えない男女の背景で擦れ違う音の輪郭に涙。カフェのヴァイオリンや街角のアコーディオンフェイドアウト。ピラール・ロペス・デ・アジャラが笑顔で去っていくことがこんなに悲しいなんて、、。
やっぱりマスターピース


追記*人名の間違い多々。訂正しておきました。