『不法労働』(イエジー・スコリモフスキ/1982)


大傑作『アンナと過ごした4日間』が今週末より上映ということで、輸入DVDでスコリモフスキ『不法労働』。1981年ポーランドにおける戒厳令を背景に、ジェレミー・アイアンズ率いるポーランド人4人組のロンドンにおける不法労働を描いた快作。故国に残した恋人アンナをはじめ、故国の緊迫した情勢は、モニターを介さなければ触れられない。ジェレミー・アイアンズにとってロンドンのあらゆる窓は個人と故国の間に立つ障壁になる。ショップウィンドウ越しに「アンナ」を見る白昼夢、ショップウィンドウ越しに見る戒厳令下の軍隊(ニュース映像)、万引きに繰り出すスーパーにおける監視カメラ、、、。リサイクルショップで購入したテレビを持ち帰って、仲間とサッカーを見るシーンが泣ける。労働者階級におけるサッカーの歓喜。アンテナの不良によってささやかな歓喜すら奪われ怒り狂った仲間が家の「壁」を破壊するシーン(解体作業が常に行なわれている)が興味深い。


震えが来るほど恐ろしいシーンがある。部屋に飾ったアンナの写真がノイズのモニターへ映りこみ、泥酔状態のアイアンズとの捩れた融解の果て、記録映像の如くアンナが笑みを浮かべる一連の画面連鎖。ふとアンナが失われた古典映画のヒロインのように思えるから恐ろしい。昨年の東京国際映画祭ではこの女性「アンナ」について、新作との関連が質問されていましたね。


追記1*質問に対するスコリモ氏の回答は「昔のことすぎて覚えていません」(!)。