『ラストムービー』(デニス・ホッパー/1971)


カイエ週間もフィルメックスも都合がつかずほぼ全滅になってしまいましたが、ボチボチ映画も再開ということで、まずはとっておきに好きな映画から見る。久々の『ラストムービー』(!)を所蔵VHSで。






現在フランスでは大規模なデニス・ホッパーのレトロスペクティブが開かれているらしく、そこには当然この世紀の傑作の上映も入っているわけでありまして、このニュースを知ったときは嗚呼!と悶絶してしまった次第(同時期にジュリエット・ビノシュのレトロスペクティブも開催中だとか、いいなー)。


http://www.cinematheque.fr/fr/la-cinematheque-francaise.html


現在『ラストムービー』は『断絶』(モンテ・ヘルマン)や『さすらいのカウボーイ』(ピーター・フォンダ)と並んでアメリカン・ニューシネマにおける(永遠に)早すぎた映画として評価されているのかもしれませんが、この作品が80年代の日本で上映された際のパンフ(古本屋で購入)を覗いてみると、名のある評論家の方たちの対談でもどうやら珍品扱いというか「ホッパー、やっちゃったよね(笑)」的なとても低い扱いで、当時を知らない自分としてはこの不当な評価に思わず肩透かしというか落胆してしまったのです。だから『断絶』のコレクターズ・エディションのライナーノーツで青山真治氏が『内なる傷痕』(フィリップ・ガレル)、『シャイアン』(ジョン・フォード)、現在では『ジェリー』(ガス・ヴァン・サント)がそれに当たる、としてこの作品を「純粋映画」と呼んでいたのには快哉を挙げた次第です。ちなみに蓮實重彦氏は80年代のベスト10としてこの作品を挙げている。また映画批評家時代の佐々木敦氏も著作で触れている。


前置きが長くなりましたが、やっぱりこの作品はスゴイ、圧倒的だ、そして新しい。舞台は南米ペルー、サミュエル・フラー演じる(!)ハリウッドの映画監督が西部劇の撮影から去ったあと、現地人たちが殺人にさえ積極的な無手勝流の映画作りに奔走するパートと、その作品にも参加していたスタントマンことデニス・ホッパー一味の女と金をめぐる、やや南米文学を想起させる倒錯の物語、という2つのパートが一応の軸にはなっている。


ホッパーが「映画の演技というものを教えてやる」と暴力シーンのアクションの振り付けをすると、現地人から「そんなのはリアルじゃない、消えろ」と一蹴りにされる場面が象徴的なように、この作品は細部の至るところで映画をめぐるメタフィクションを意識させる。極め付きはカメラやクレーンにいたるあらゆる機材が、籐で作ったような木の玩具のような装置になっているところ。暴動で炎の坩堝と化す(凄まじい)撮影現場との組み合わせ、そして現地人に幽閉されるホッパーの血まみれのヨロメキを捉えた異様なカッティングは、ほとんどシュールレアリスムの世界。映画は「神は何処にいる?」と吐き捨てるようなナレーションと共に唐突に終わる。この居心地の悪さ。最高である。


DVD化されるとよいのにね。それよりフィルムで見てみたい。

断絶 コレクターズ・エディション [DVD]

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ゴダール・レッスン―あるいは最後から2番目の映画

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