『パリはわれらのもの』(ジャック・リヴェット/1960)


輸入DVDでジャック・リヴェット『パリはわれらのもの』(フランス盤・無字幕)。昨年の大規模なレトロスペクティブは、やっぱ大事件だったのだなーと、最近になって懐かむことが多いのです。『アウトワン』、『狂気の愛』、『デュエル』、『ノロワ』、といった決定的な作品群や、見た直後は「ちょっとユルくね?」と、そこまで気に入ってなかった『メリー・ゴー・ラウンド』(今はあれこそが素晴らしいのかも?とよく思い返す作品です)まで、そして、ビュル・オジエが舞台挨拶でサングラスを外した瞬間があまりに「映画的」だったことまで(『狂気の愛』に同じようなシーンがあるのです!)がしっかりと記憶に焼きついています。特に『デュエル』はDVDを手元に置いておきたいなーと思います。


『パリはわれらのもの』は昨年日仏学院で英語字幕付きの上映もありましたが都合で行けなかった作品。リヴェットの全作品がそうであるようにこの作品もやはり非常に語りにくい。いや格段に語りにくい作品かもしれない。「謎掛け」は伏線としてパズルの1ピースを果たしつつ最終的な「謎解き」には導かれない=純粋伏線(?)。ファーストショットの走りゆく電車の車窓から捉えたパリの景色のように、「謎掛け」と「謎掛け」は主体の景色として横軸に平行に進んでいくように見える。真っ白いキャンパスにぶちまけられたウィスキー。スパニッシュギター、シタール、シンバル、海の音、鐘、様々なノイズ。連続写真の女性モデルは表情がクルクルと弾ける、上がった足は、踊りだす。


畏れつつ分かってたことですが、リヴェットって最初っから規格外の作家なのだね。ここには『狂気の愛』や『アウトワン』のように、いつまでも終わらないリハーサルがある(円形劇場跡のような広場や廃墟然とした秘密空間が素晴らしい)。『デュエル』のような無数の扉の開閉がある。そして『北の橋』のパリも用意されている。


巨大なパリの街に押し潰されそうな女の子ベティ・シュナイダーの彷徨。部屋で演劇仲間とフリッツ・ラングメトロポリス』の暴動を見るシーンが素晴らしい。上昇する群集、フィルムが切れ、映写機の音がカタカタと虚しく部屋に響く。ラストショット、ベティ・シュナイダーの視線で決して上昇することなく水面ギリギリを水平に飛び続けるカモメの群集、その繰り返される往来に豊かなポエジーが浮き上がる。


追記*ジャケットの何処かの屋根の上から見下ろすパリの大俯瞰は素晴らしすぎです。あとゴダール氏の楽しそうな演技も忘れられない。ちなみにリヴェットの新作『36 VUES DU PIC SAINT-LOUP』はジェーン・バーキン主演!楽しみ!


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ところで「オルレアンの少女」が少しだけ聴ける『パンドラの匣』(富永昌敬)の予告編はとてもよい出来で、ギターを抱えた川上未映子さんが素敵なだけでなく、窪塚洋介、なかなかよいじゃん!と、テンションが上がりました。期待大☆
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