『血の婚礼』(クロード・シャブロル/1973)


東京藝術大学馬車道校舎にてシャブロル=オードラン73年の作品。DVD上映、英語字幕で。ずっと思っていたのですが『トウキョウソナタ』のラストシーンってここのエントランスですよね?ピアノもあったし。違うのかな?




ステファーヌ・オードランとの蜜月と同じくらい、シャブロルと撮影監督ジャン・ラビエは幸福な関係にあったのだなあと思わずにはいられない。凄まじくカッコよくて、キテレツなカメラですよね。『女鹿』然り『不貞の女』然り『破局』(!)然り。もちろんアンリ・ドカエとの関係も最高なのですが。森へ向かうミシェル・ピコリを車の後部座席から淡々と不気味に捉えた幾数にも重なるショット。森で待ち合わせたオードラン(森というところが素晴らしい)の体にケモノのように貪りつくピコリ。秘密の逢瀬のあと、今度はオードランの運転する車を同じように後部座席から捉えるカメラ。情事を終えた彼女は夫と娘の住む自宅へ向かう。こういう反復は、まさに映画にしかできない洗練された形式なのだと思う。素晴らしい。オードランと可愛らしい娘が何処か共犯関係を結んでいるかのような仲睦まじさも魅力的だ。義理の父は女の世界に入れない。最も驚かされるのはピエール(義理の父)を殺すシーン。真夜中の高速道路、ピコリと組んでピエールの殺害に成功したオードランが現場をフラりフラり行ったり来たりするのを捉えたカメラの異様さはちょっと文章では書けない。なんというか血だらけの死体が無臭のオブジェになってるんですよ。ミイラ化してるというか。そして死体を乗せた車は炎上する。あまりにもシャブロル的、というべき悪意のない悪意を纏ったラストまで練りに練った伏線も見事にキマっていく。やっぱ面白いわ、シャブロル。