『ラジャ』(ジャック・ドワイヨン/2003)


そして今日はこれ。ゼロ年代ドワイヨンの空恐ろしさ炸裂な『ラジャ』。英語字幕で。これはホント見てよかった。互いに片言しか通じないフランス人男性とモッロコ人女性による、奇妙に捻じれ合いながらも何処までも平行線を辿ってしまう愛の交換(愛と金銭の交換)/終わりなき愛と主従の物語。


人物の動きに合わせながらゆっくりたゆたうような撮影は『誰でもかまわない』と同じくエレーヌ・ルバール。基本的に被写界深度の浅さを意識させる撮影で、奥でフラフラしていたり立ち去っていく人物をトバしている(ボヤけている)のがモノ凄く印象的。


”主”の立場にある50過ぎのフランス人男性フレッドが与える「金銭」と「ギフト」と「愛」に愛憎入り混じりながら引き裂かれていく”従”の女性ラジャ。しかしラジャもまた支配される側の抵抗と「仕事」(彼女には夫がいる)によりフレッドの心に愛と憎悪(嫉妬/疑念)を落とし続けることで結局彼の心は引き裂かれていく。映画の終盤では何度も決定的な破局を迎えては再び1対1の平行線を辿る2人が描かれる。その行き着く先にフレッドの痛ましい台詞と一人泣きが待っている。


と一見重い話のようだけど、フレッドの身の回りの世話をする2人の叔母さんとのやりとり(叔母さんたちは”侵入者”であるラジャに嫉妬を隠さない)がユーモアたっぷりで笑えたり、フレッドとラジャが触れ合いそうで触れ合わない微妙な、中盤までの2人の肌と肌の距離が何処かエロかったり(プールでじゃれる2人が特に!)、あくまで軽やかに処理されていく様はさすがの一言。何よりこの作品のカメラが好きだ。傑作ッ。


追記*ラジャの頭突きを忘れない。