『破局』(クロード・シャブロル/1970)


引き続きシャブロル+オードランを輸入DVDで。これは野心に溢れたすこぶる奔放なフィルム。しかも120分弱途切れぬ不穏なムード。こんな作品、誰だって憧れますヨな大傑作です。父親に投げ飛ばされ(この時点で衝撃的なのだが)負傷した子供を抱え全力ダッシュで外に飛び出すオードランを捉えた全景ショットが素晴らしい。続いてオードランがお世話になる館(息子の入院する病院の近く)で精神薄弱なメガネ少女が出迎える&タロット遊びに興じる3人組の叔母さんが登場するや、これはシャブロル的了解というか、参りました、となる。だって、こうゆう如何にも不安定な、次に何をしでかすか分からない人たちを描くときのシャブロルって天才的でしょう。彼が後に撮る『汚れた手をした無実の人々』(1974)というタイトルは、まさにこのシャブロル的「悪意のない犯罪」をそのまま表していると思う。裸で部屋中を動き回る女の立ち振る舞いも、古典的でありながら、どこまでも無邪気にしてエレガントなシャブロル的悪意を纏っている。しかしこの作品をこちらの予想を遥かに超えたところで特別にしているのは、ジャック・ラビエによる思わず先鋭的とも言いたくなるよなカメラワークと、極めて不意打ちなカッティングによる。そういえば『女鹿』(1968)のカメラも絶品ですよね。薬(キャンディに仕込まれる!)でラリったメガネ少女にブルーフィルムを見せる場面なぞ、アイディアも危険だけど編集もかなりヤバい。そして映画はビックリするような着地点へ。オードランが佇む公園で何色ものバルーンを手にした男と擦れ違う、という伏線が何度かあるのだけど、まさかこういう終わり方として結実するとは。。。時空の歪んだ草原でステファーヌ・オードランが歌いだす瞬間身震いがした。そして倒れる夫の背後に突如として現れるオードラン+3人の叔母さん、そのマネキンのようなポーズ。なんてカッコいいのだろう。これは本当に特別な作品ですッ。