『パラダイス・アレイ』(シルベスター・スタローン/78’)


ビデオで。映画作家スタローンのデビュー作。全力ダッシュでビルとビルの間を飛び移る命がけの冒頭は感慨深い。『ランボー 最後の戦場』の冒頭でも全力ダッシュの殺人ゲームが行われていたわけで。腕相撲、リングでの死闘、下町、など後のスタローンを予見する場面も既に用意されている(ただし戦うのはスタローンではない)。随所に散りばめられた小道具(氷、空き缶、猿など)はじめ、細かい芸(チャップリンのモノマネ、タップダンス)が画面を豊かにしている。出色は雨漏りのせいで水浸しになったリング。黒人少年(タオルボーイ)のタップダンスが激しく水を弾く。死闘の最中、漏電で照明が切れかかるのもよい。なんと主題歌はスタローンが唄うバラード!スタローンはこれからも追っていきたい映画作家だと強く感じる佳作。


追記*この『パラダイス・アレイ』はレオス・カラックスがカイエに投稿した最初の批評としても知られています。「両親を失った孤児の悪夢」。


ランボー 最後の戦場』における、彼の心の葛藤(戦闘マシーンとしてのランボーの帰還)を完全にスッ飛ばした展開にはある種の凄みがあるかもしれない。キメ台詞「ムダに生きるか、何かのために死ぬか、お前が決めろ」がドスの効いた低音(戦慄!)で囁かれたあと、一切の感情を拒んだ戦闘マシーンとして凄まじい殺戮が行われるわけで。とはいえやっぱノレないんだけど。