『クリムゾン・ゴールド』(ジャファル・パナヒ/03’イラン)

シネフィルイマジカ直輸入映画で。


冒頭。
宝石店の奥から入り口へ(外へ)向けられたカメラが、
店内で起きているただならぬ暴力の光景に怯え注視する
野次馬(人がどんどん集まってくる!)の表情を捉える。
カメラの手前で起きている(事件)はほとんど影として
しか認識されず、やがて姿を現わそう図体の大きな男が
こめかみに向けて銃口を発射する→ワンカット長回し


この極めて刺激的なショットの次に、多くの優れたイラン映画
備えるバイク移動のショットが連鎖すると、こりゃ参ったってなる。
バイクの風除けの真ん中だけ真ん丸にクリアーな仕様を生かすように、
カメラが正面に回り込むと、巨体男のすごく可笑しな絵が完成する。
それがまた一段と画面を豊かにしているわけで。


ピザの宅配人である主人公がひょんなことからブルジョアのドラ息子の
家に入り込む(話相手が欲しいドラ息子に歓迎される)シーンにおける
ドラ息子の独り言と主人公のフラフラ彷徨は、ほとんど何も起きないに
も関わらず、眼に優しい超豪邸の装置も相俟った画面の持続力がすごい。


イラン映画の底知れぬ豊かさをリスペクトしたくなる作品でした。
こりゃいいもの見た。ちなみに脚本はアッバス・キアロスタミ御大。