『バックドア・トゥ・ヘル』(モンテ・ヘルマン/1964)


こちらは輸入DVDで。フィリピンロケで撮られた戦争映画。激しい銃撃戦の末、小屋を包囲したつもりの一部隊が、ふと見渡すと無数の銃を向けられていた、という冒頭からまず魅せてくれる。これは本日の『魔の谷』『旋風の中に馬を進めろ』の2本や、先日の2本にも言えることだけど、主人公は有無を言わさず事態に(犯罪に)巻き込まれる。戦時中の原地の小学児童数名を捉えたドキュメンタリーぽい妙に生々しいカメラの次に、大胆不敵にもこの小学校を防御壁とした銃撃戦が行なわれる。山下将校。対日本人ということで殆ど聞き取れない謎の日本語が炸裂する。


ここでもヘルマンはウンザリするような長い道程を描き続ける。約70分の作品にも関わらず険しい森林を抜ける部隊の徒歩シーンがいつ終わるでもなく描かれる。本隊との通信を遮断された”迷い子”部隊は疲労の重なる徒歩の末、日本人のアジトに辿り着く。激しい銃撃戦の末、部隊は同志を失う。「死体を河に」と隊長。原地ゲリラ軍の戦友はみな殺されてしまった。「これからどうするの?」との女性の呼び掛けに、「死体を数えるのさ」と決定的な敗北感と虚無に包まれ、唐突な終幕を迎える。