『わが秘められた生涯』『映画、わが自由の幻想』(サルバドール・ダリ/ルイス・ブニュエル)

映画、わが自由の幻想

映画、わが自由の幻想

それぞれ単体で読んでも異形な過激さと面白さを兼ね備えているのだけど合わせて読むと面白さも倍速に。ブニュエルの「アンドレ・ブルトンならシュルレアリスム的な行為だと賞賛しそうな〜」総じて人の命が滅茶苦茶に軽いメキシコのエピソード(警官が銃を片手に人間狩りに興じる!)も仰天してしまいますが、ダリの言葉の錬金術とでもいうべき次々と湧き上がるイメージのスピード感にも圧倒されてしまう(ダリ特有のイメージ遊びといえばそうかもしれないけど、でもやっぱこの技術はスゴイと思う)。


有名なアンドレ・ブルトンによる「ダリ破門」のくだりもそれぞれに喰い違っていて興味深いのだけど、ダリが”ミューズ”ガラによって童貞を捨てたときの熱狂的な喜びを6ページにも渡る便箋でブニュエルによこしたというエピソードも素敵だ。さらに面白いのはブニュエルがダリのセックスへの無関心ぶりを語るところ。ダリという男は、たとえ女性を部屋に呼んでも、その女の服を脱がし目玉焼きを焼かせ、彼女の裸体の上に目玉焼きを乗せさえすれば満足、おしまい、出て行け。とか。ダリが生涯に肉体関係を結んだのは愛妻ガラだけなのだとブニュエルは力説しています。


さて親友だった2人はその後離れ離れになってしまうわけですが、『アンダルシアの犬』のアイディアを出し合ってお互い腹を抱えて爆笑し合ったという2人の絵を想像するとちょっと泣けますね。


以上は菊地成孔氏の素晴らしいペペの新譜を受けてのものです。「チューインガムのTVCMの悪夢」(サルバドール・ダリ)という曲があるので。エリザベス・テイラー主演の『バターフィールド8』、以前菊地さんが言及されてたので見たのですが、これも大好きな映画ですね。「27歳だが、43歳に見える」リズ。もっと聴き込みたい。


同時代の作家を採点したり悪ノリも愛らしいダリの『天才の日記』も面白いです。手元に欲しい。そういえばチュパチャプスのデザインもダリだった。


追記*当時のリズの我儘ぶりはライナーノーツで触れられている通り以下のサイトに。
http://www.geocities.jp/h2o_classic/butterfield8.html