『雪崩』(成瀬巳喜男/1937)


成瀬巳喜男を2本。日本映画専門チャンネル録画で。そこに座ってなさいと命づれば、いいよと言われるまで座っている従順な妻(霧立のぼる)の無抵抗に私たちは誰も敵わない。息子の不倫を殆ど感情を介さないかのような言い回しで冷徹に責める/分析する父(汐見洋)が圧倒的に素晴らしい。名演すぎるッ。父と息子による問答の律儀な構図の切り返しが汐見洋に一本の揺るぎない芯=父性と権力を感じさせる。この映画の”雪崩”は無抵抗の妻こと霧立のぼるの余りにも無垢なアップによって一気に起こる。”面白みに欠ける”妻に感情を爆発されたことによって息子は自殺/他殺を思い留まる。そしてラストの海岸。息子の不倫相手と病弱な弟との間で交わされる会話「外国にでもいけば?」。60分の中でこれほどいろいろな感情が交錯するとは!当時の丸の内のモダンな都市風景(カッコいいです)も嬉しい怒涛の傑作。