『12の椅子』(トマス・グティエレス・アレア/1962)


こちらは有名な原作があるそうですが、非常に知性を感じさせる脚本だなと。革命後の世界で邸宅を没収された旧ブルジョアとその使用人が「12の椅子」に隠された宝石を捜すという物語。この「12の椅子」は個人の所有を離れ、国有物となり、オークションにかけられたりで、各地にバラバラに点在してしまう。「社会主義万歳、気に喰わないなら、我慢、我慢」、ふと二人の間を通り過ぎるコドモの唄が効いている。革命の熱気に対するこの距離感。




上映前のトークで太田昌国氏と岡田秀則氏が語っていたことが興味深かった。トマス・グティエレス・アレアガルシア・マルケスソビエト共産党ではなくイタリア共産党に留学している、というところが重要で、ここでヌーヴェルヴァーグの衝撃を受けた、とか、二人が最も好んでいた作品はデ・シーカの『ミラノの奇蹟』、だとか。ラストのロングショットは、視界が一気に晴れ渡っていくような、まさに”奇蹟”のような清々しさ。