『コートダジュールの方へ』(アニエス・ヴァルダ/1958)

こちらはゴダールが賛辞を贈っている傑作短編。誰にも聞こえないように小さく拍手をしてしまいました。素晴らしいです。空絵が中心なのですが、横への動きの途中で急激に上昇しピタりと止まるカメラにビクッとする。人為が描き出す楽園が崩壊して、すべての人間がいなくなり、真のエデンが生まれたとき、波打ち際を走る2頭の馬(恋人同士に見える)に泣きそうになった。美しい。此処にはかつて人類がたしかに存在していて、彼らは赤と黄色のファッショナブルな水着を着ていて、その証拠に砂浜には赤と黄の色のついた二人の跡が残されていて、かつて「エデン」と名の付いたホテルの跡には、裸の男女が眠っている。新しい世紀へ。ここを始まりとする「新しい人」へ。