『トイ・ストーリー3』(リー・アンクリッチ/2010)

「すべての言葉はさようなら」なんて言葉はあるけれど、もし「すべてのショットがさようなら」だとしたら?地元シネコン3D字幕最終日に駆け込んだ『トイ・ストーリー3』は脱獄映画やアトラクション映画として近年のハリウッド映画の最高峰に思えた。目前に迫る溶鉱炉に手を繋いで目を閉じるトイたち=相棒は、”ずっと一緒”のさよならを覚悟する。アメリカ映画の古典性すら備えている牢獄のシーンや一連のアクション展開に痺れつつ、この映画が予め予告された別れの結末へ向かっていることを意識するとき、『トイ・ストーリー3』のすべてのショットが、ただひたすらに「さよなら」だけを画面に滲ませているように感じられた。それは私たちが毎時間毎秒、常に直面している問題と1ミリも違わない。私たちはトイ=相棒や大好きな家族や恋人とずっと一緒にいられないことを知っている。『トイ・ストーリー3』における別れとは、渡すこと、運命を託すことだ。ウッディは一人暮らしを始めるアンディ少年とママの別れ=母親の寂しさを目撃している。アンディ少年が自らの「宝物」を託すその直感と勇気に涙する。この映画のとっておきに美しいラストショット、そしてウッディの最後の台詞は、ずっと一緒にいることが不可能な私たちを悲しくさせると同時に、何日か何年か先に必ずやってくる未来の「さよなら」へのインスピレーションを与えてくれる。アンディ少年が宝物の未来を託したように、この作品を見たコドモたちの未来を、ふと信じたくなった。ウッディがカウボーイであることの詩が、其処にある。大傑作。