『イングロリアス・バスターズ』(クエンティン・タランティーノ/2009)


地元シネコンにてタランティーノ新作初日。前作『デス・プルーフ』のときより本作を語るの声の調子がやや落ち着いたトーンのように感じるのは気のせいでしょうか?いやいや、とんでもない!これは大・大傑作じゃないか。まだ公開初日なのでネタバレに注意しながら書きますが、映画/映画愛に対するラブとヘイトの隙間に非常にさり気ない形で極上のメロドラマを忍び込ませているシーンがあって、たったワンショットで語られる恋人たち(この二人の関係・設定がまた粋に更新されているわけですが)のキスが儚かったり永遠にも感じられたり。ああ、この美しさにとことんヤラレてしまったよ。タラ氏に夢中状態。



予想通りブラピは主役というよりも味付け役。この映画のメインは二人の魅力的な女優メラニー・ロランダイアン・クルーガーに尽きる(全員素晴らしいけどね。ハンス少佐を演じたクリストフ・ヴァルツはカンヌ受賞も納得の素晴らしい演技)。近年のアメリカ映画で、これほど女優をカッコよく撮れた作品というのは、ちょっと思いつかない。タラ氏はホント女優を撮るのが上手いね。上手いといえば、大胆な移動撮影なんかも『キル・ビル』の頃よりもっと堂に入っているばかりか、ほどよい塩梅にオモチャ感が残っていて、この人は本当に努力の人なのだな、と涙さえ禁じえなかった。『イングロ』は『デス・プルーフ』と同じく前半にダベり、後半に突っ走るわけですが(そして『デス・プルーフ』が真に素晴らしいのは前半の車内での眩い撮影と繋ぎだと思っている者ですが。あれは全然「ダラダラ」とか「停滞」じゃないよ)、ああ、このひとつひとつのショットから滲み出るタラ氏の古典に根ざした詩魂のような塊が胸を打ってやまない。「すべてこわれてしまえばいいのに」という終末を描く美しさを堪えながら自らの映画を全力で前進させようとする力が漲っている。大感動。


ダイアン・クルーガー(ドイツの女優、スパイ)とバスターズが組んで語り合う地下酒場でナチが同席した瞬間に起きていたテーブルの下の事件、ブラピが黒頭巾で強制移送される一連のアクション、拳銃の諸々、メラニー・ロランの、赤い衣装の如く、、、あの舞台、、、以下、素晴らしすぎるけどシーンへの言及は自粛。今年はジャームッシュといいタラ氏といい凄いなー。



『イングロ〜』を語る言葉がやや慎重なのは、この映画がストレートなくらい「映画」へのラブとヘイト、ロマンチックな破壊願望を備えているからだったりするのかな、とちと思う。とにもかくにも必見!というかゾッコン。早速明日もう一回見るかも。


追記*アントニオ・マルゲッティ〜♪