『かもめ』(マルコ・ベロッキオ/1977)
スコリモ、ウルマーと悉く日程が合わず縁がないのかなーと思っていた法政大学にてマルコ・ベロッキオ。本日2本上映された内のこちらは2本目。と書き出してみたものの、この作品についていったい何を語ったらよいのか困る。まとまったことを書けそうもないので、以下完全に備忘録としてのメモで。
ハムレットを上演する木造の舞台が湖の畔に立てられる。TV作品ということで人物のアップが多いことは事前に配られた資料に記載されていたのですが、いざ始まってみるとラウラ・ベッティはじめ、素晴らしい顔、顔の連続で、しかも舞台と客席を遮るカーテンのやや灰色がかった絶妙な透け方と相乗して画面がとても豊か。曇天の天気がどんどん悪くなるのですが、室内にシーンが移動しても外の天気の悪化が徐々に判るような音作りがされていて、やがて嵐のような雨が降り、潮が満ちたかのように舞台は浸水される。進行する物語とはまったく別のところで恐ろしく長い時間をかけてとても緩やかに変化してゆくのが面白い。ラストの闇の中でテーブルを囲むポーカーのシーンがいつまでも記憶に引っかかっている。女優の自慢話が狂気のような浮き方をしていて恐ろしい。緩やかに狂っていく。
一本目に上映されたのは『ヘンリー4世』(1984)でした。女性の横顔の影と車窓に流れる景色+アストル・ピアソラの音楽、という始まり方にシビレまくる。トロピカルなラテンジャズの演奏をマルチェロ・マストロヤンニが破壊するシーンから素晴らしいのだけど、嗚呼カッコいい・・・と幸せに浸りながら寝不足でダウン不完全鑑賞、無念です。
上映後の赤坂大輔氏の講演でベロッキオの紆余曲折の経歴が語られる。今日上映した作品は作風に劇的な変化が訪れた転機の2作品ということらしいです。抜粋映像でガタリが言及しているというドキュメンタリー『狂人の解放』(1975)が上映された他、なんといっても驚いてしまったのは「作家(性)の自殺」ということで紹介された『七つの顔のライオン』(グラウベル・ローシャ/1971)の抜粋映像です。ジャン=ピエール・レオーとかも出ているらしいのだけど、実際の革命運動の中にプロの演技(演劇)が混在するという、衝撃映像。ドン・チェリーみたいなフリージャズの演奏が囲む実際の指導家の行進と、一方で首輪で連行されるウーゴ・カルバーナという図。ギリギリすぎる!
法政大学、初めて来たのだけどあんまりに綺麗な校舎に驚いた。