『ミーポック・マン』(エリック・クー/1995)


こちらはフィルム上映。冴えない青年と娼婦って設定がどこかツァイ・ミンリャンぽいなーと途中までは思っていたのですが、ひとまず「何処か遠くへ行きたい女」と「此処に留まり続ける男」の物語といえる。映画の後半、青年が女性を拾い家に持ち帰るあたりから、徐々に過激な相貌を呈してくる。「いつかロンドンに連れてってあげる」と娼婦を騙しながら、やりたい放題の白人カメラマンに暴力の制裁が下るシーンや、まるでクロエを看病するコラン(ボリス・ヴィアン『日々の泡』)のように、病に倒れる女性を青年は誠意を尽くし看病する、この深い影に覆われた密室のシーンはなかなかに味わい深い。やがて青年を受け入れる女性の表情や肌の艶がエロチックなやわらかさを帯びる。このセックスシーンが美しい訳は(極端な!)ネタバレになるので書けません。この作品が愛の交感の一方で「父」の不在を描いていたことも記しておきます。


ちなみにミーポックとは無口な店長=青年の作る麺料理のことだそうです。


未見ですが、ここから『一緒にいて』(ポスターがカッコいい!)へのジャンプの胎芽が読み取れる2作品でした。海外の映画祭で高く評価される理由はよく分かります。が、一方でどうしようもなく撃ち抜かれてしまう、ということもなかったのですが。この作家への評価はあと1本くらい見てから判断したいところ。