『ピロスマニのアラベスク』(セルゲイ・パラジャーノフ/1986)


アテネフランセにてパラジャーノフの短編。このような真の傑作に出会うことがどれほど幸福な体験か説明するのは難しい。尋常ならざる傑作であると言ったところで作品と言葉の距離は一向に縮まることがない。作品が現実世界を脅かす。それほどまでに打ちのめされた。鳥肌。まったく規格外な作家だよ、パラジャーノフは!


「一人ゴダール×ミュジー」と形容したくなるほど画と音が調和/不調和を繰り返す。そりゃあ映画は共同作業なのだから「一人ゴダール×ミュジー」のわけはないのだけど、、。複数の絵画の画面内コラージュと、その絵画の世界に住む人々の実写で作品は構成されている。実写で撮られたすべてのショットは、まるでシュールレアリスムの絵画が動き出すような世界(当然、人力でだよ?)。女性の振り向きが繰り返しスクリーンに投影される。劇中に流れる時間だけでなく、私たちがスクリーンに向き合うその時間すらくねり曲がっていく奇妙な体験。パラジャーノフこそ真の魔術使いだね。


*追記 ゴダール作品の音楽といえば突然音楽が鳴り止むカットアウトですが『ピロスマニのアラベスク』ではイン/アウトに前の音と次の音が同期している時間があって、これはコラージュというよりもDJミックスみたいなものですね。果たしてYoutubeでこの作品の凄さが分かるか微妙なとこですが以下に。