『工事中』(ホセ・ルイス・ゲリン/2001)


輸入DVDでホセ・ルイス・ゲリン『工事中』。こちらはDVD−BOX未収録の作品。ペドロ・コスタヴァンダの部屋』と同時期に撮られた破壊されつつある地域をドキュメント。「nobody」最新号によると『工事中』はスペインでのゲリン唯一のヒット作で、公開時はペドロ・コスタと講演するなどその共振性が話題になったようです。『影の列車』と同じく現存するこの街の記録フィルム(モノクロ)から映画は始まる。現在時制になって(カラー)複数の眼(再び!)が貼り付けられた壁にタイトルが浮かび上がり、鳩が一斉にフレームを横切る3つのカットに惹きこまれる。続いて室内、ヴァンダを想起させるハスキーな声を持つ女性と男性がベッドに横たわっている。二人はドラッグを嗜む。開発の進む街では骸骨が発見される。職人の手によって遺体は傷つかないよう丁寧に掘り起こされる。面白いのはその様子を見下ろす老若男女の見物人が骸骨に「物語」をつけていくところ。服を着たまま埋めるのか全裸で埋めるのかと遺体の処理をめぐって議論を交わす老人が可笑しい。「骸骨は夜になると起き上がるんだぜ」と少年。「単なるファンタジーよ」と返す少女。遺体は1500年の歴史を持っている、とローマ帝国の話が展開される。はじめに即物的にモノが出てきて、それに複数の意味=物語(ウソかホントか定かではない)が付けられる形式は老人たちのランチタイムでも繰り返される。



アパートとアパートの狭い間をクレーンに吊り下げられたセメントの入ったコンテナが移動する。出窓から眺める老人や洗濯物を干す女性の目の前をコンテナが横切っていく。時にコンテナは宙吊りのまま放置される。窓際で小さな恋が生まれる。やがてこの街を去る作業員が洗濯物を干していた女の子に声を掛ける。アパートの一室ではホークスの『ピラミッド』がTVモニターに映っている。夜が明け再び建設作業が開始される。黒人作業員が持ちかける話に「政治には興味がない」と返す親方(?)。死体が蘇る話をした少年は「ボーイフレンドじゃないわ」と少女に否定されてしまった。新築のマンションに移住者がやってくる。この街の夜空に盛大な花火が上がる。21世紀が始まる。ドラッグ依存のカップルが街を歩く。女性が男性をおんぶしている。カメラは二人を長い長いトラッキング撮影で追う。「さよなら、わたしたちの家!」と清々しく叫ぶラストに涙する。美しい!